研究実績の概要 |
ある記憶を思い出すことが思い出した対象と関連する記憶を抑制する現象である検索誘導性忘却(Anderson et al., 1994)を取り上げ,昨年度に引き続き非言語的図形を対象とした検索誘導性忘却の研究を行った。本年度は,昨年度行った非言語的図形の検索誘導性忘却について,言語化を阻害した条件を設定し検討を行った。具体的には,前回は非言語的図形に色を付与していたが,今回はその色をなくし,検討を行った。実験の結果,学習した非言語的図形を思い出すこと(検索)が他の非言語的図形の忘却を導くことがわかった。すなわち,言語化を統制した場合でも検索誘導性忘却が生じることが明らかになった。また,検索誘導性忘却は記憶の検索によってのみ生じるという検索固有性という特徴を持つとされている(e.g,Anderson, 2003)。そこで,先で得られた非言語的図形の忘却が真に検索誘導性忘却によるのかを検討するため,検索を再学習に置き換えた条件でも検討を行った。その結果,再学習条件では非言語的図形の検索誘導性忘却が生じないことが明らかになった。この結果は,抑制対象と統制対象の間で「差がない」という仮説をベイズ統計によって検討した場合でも支持された。したがって,先に得られた結果が非言語的図形の検索誘導性忘却であることが再学習条件の検討によって確認されたと言える。これらの研究成果は第34回日本基礎心理学会で発表された。
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