感度解析に基づくトポロジー最適化では、順問題・随伴問題と呼ばれる二種類の境界値問題を解く必要がある。本研究では、これらの境界値問題を境界要素法で離散化して得られる代数方程式の係数行列が多くの場合共通であることに着目し、高速直接解法の利用を検討した。順解析の際に対応する係数行列を(高速に)LU分解しておけば、随伴解析においては前進・後退代入を行うのみで良い。昨年度開発した高速多重極法とInterpolative Decomposition (ID)を併用した高速直接解法に基づく境界要素法を、レベルセット法に基づくトポロジー最適化法と組み合わせた。例えば、開発した手法をあらかじめ定めた観測点群における音場強度を最小化する吸音材の配置を求める最適化問題に適用したところ、吸音材表面の境界要素数が10000程度の問題に対して、従来法と比較して計算時間は1/4程度となった。このことから本研究で開発した手法の有効性が分かる。この結果を含む論文は投稿準備中である。また、境界要素法の高速直接解法の応用例のひとつとして、非線形固有値およびそのトポロジー導関数の数値計算法を開発した。
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