本年度は、変換がマルチボトムアップ木変換器で表現される場合における、関数性の決定可能性について検討を行った。これまでに、変換が拡張線形ボトムアップ木変換器、問合せがボトムアップ木変換器のクラスで表現される場合における問合せ保存性の決定可能性を示している。その中で拡張ボトムアップ木変換器の関数性判定を利用しており、そのクラスにおいて関数性が決定可能であることと判定にかかる時間計算量について明らかにしてきた。関数性判定法の中では、拡張ボトムアップ木変換器を、特定の条件を満たしたマルチボトムアップ木変換器に変換し、その上での関数性判定を行う。しかしながら、一般のマルチボトムアップ木変換器においては、関数性が決定可能であるという予想はしていたが、その証明は与えられておらずその時間計算量についても不明であった。本年度は、マルチボトムアップ木変換器の線形な部分クラスにおける関数性の決定可能性を示した。その証明では、まずボトムアップ木変換器の関数性の決定可能性を示すために用いられているEngelfrietの木代入に関する性質を木の組の代入に関するものに拡張し、線形かつ無置換な部分クラスでの決定可能性を示した。そして、線形かつ無置換なマルチボトムアップ木変換器は線形なマルチボトムアップ木変換器に等価変換可能であることを示した。一般のマルチボトムアップ木変換器における決定可能性の調査は今後の課題だが、同様のアプローチで証明可能であると予想している。
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