研究課題/領域番号 |
26870275
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
廣田 勲 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (50572814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植物資源利用 / 焼畑システム / ラオス北部 / 山地農業 / 生業変化 |
研究実績の概要 |
ラオス北部の農山村では、不安定になりがちな農業生産を安定化させるように、様々な活動を組み合わせた複合的な生業が営まれてきた。しかし現在、市場経済の浸透にともなって生産活動が一部の活動に特化し、複合的な生業形態は失われつつある。本研究は、市場経済化する農村社会における複合生業を様々な側面から再評価し、地域の持続的かつ安定的な発展のための生業のあり方を提示することを目的とする。 今年度は、2014年9月、2014年12月~2015年1月にラオス北部において現地調査を実施した。現地調査は、カウンターパートであるラオス国立農林業研究所のスタッフを同行し実施した。ルアンパバン県周辺の村落を複数訪問し、近年の生業、農業生産および植物利用に関する基礎的な聞き取り調査を行った。調査の結果、近年の生業が著しく変化していることが明らかとなった。特に顕著であったのは、2000年以降に広域で行われたインフラ整備による生活環境の変化であり、これによって植物資源利用や食生活が大きく変化したことが明らかとなった。 このような基礎的な情報を収集する聞き取り調査と合わせて、複数の村落の焼畑休閑地に10メートル四方の方形コドラートを設置し、コドラート内に存在する全ての植物種と利用法について、調査を行った。調査はこの地域で焼畑を行う主要民族であるカムの村落を選定し行った。 また、2014年9月にタイ・バンコクの王立農林局のハーバリウムを訪問し、自身で同定できなかったラオス北部で得られた植物種について、カセサート大学の職員と共に同定作業を行った。この作業により、一部の植物種を除きほぼ同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラオス北部において、近年の生業変化に関する基礎的な聞き取り調査を行うことができた。また合わせて今年度は植生および植物資源利用について調査を行ったが、そこで得られた標本をタイ・バンコク王立農林局において同定を行うことができた。植物種を同定することはこの類の調査を行っていく際には必須の活動となる。初年度においてこの作業を行い、次年度以降の研究を遂行するための基礎資料を作成することができた。 調査の日程の都合上、当初計画していたラオス北部全体にまたがる調査は実地できなかった。しかしこの地域の生業転換に関する基礎的な情報を得ることができ、おおむね順調に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、ラオス北部の生業転換の基礎的な情報を得ることができたが、これはある程度限られた範囲における情報となる。これまで実施してきた予備調査からラオス北部には様々な生業パターンが存在することがわかっており、それぞれの生業パターンあるいは地域ごとにおける生業転換の情報を得る必要がある。これまで得られた情報をもとに聞き取り調査項目を再構成し、より効率的な広域調査を行う予定である。 また、初年度に訪問した村落から2,3ヶ村を選定し、継続調査を行う予定である。これにより、より詳細な植物資源利用動態が明らかになる。 これに加え、ラオスの県の農林局および郡の農林事務所に聞き取り調査を行い、近年農作物に対して大規模な損害を被った村落を抽出する。これと植物資源利用動態を比較し、自然資源利用に大きく依存した村落の復元力の評価を行うための基礎的情報を得る予定である。
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