ラオス北部の農山村では、不安定になりがちな農業生産を安定化させるように、様々な活動を組み合わせた複合的な生業が営まれている。しかし現在、市場経済の浸透にともなって生産活動が一部の活動に特化し、複合的な生業形態が失われつつある。本研究は、市場経済化する農村社会における複合生業を様々な側面から評価し、地域の持続的かつ安定的な発展のための生業のあり方を提示することを目的とする。 2017年度については、ラオス北部の村落を対象地として引き続き現地調査を行った。前年度は本地域の作物生産にとって副次的な意味を有するホームガーデンに生育する植物のリストアップを行ったが、これを踏まえ本年度はさらに量的評価を行うためのデータ収集を行った。また、前年度までの調査から明らかになりつつある、近年急速に採取圧が増大していると考えられる複数の林産物が、どの程度生業に与える影響があるのか等の実態を把握する調査を合わせて実施した。調査の結果、ホームガーデンは地域の生業における副次的な生産の場であったものの、地域の生業に対しては生産量の多寡よりむしろ食文化への貢献としての意義があるという結果が示唆された。また近年急速に採取が増加している林産物としてキノコやヤマノイモ属植物等が見いだされた。これらは、ほとんどすべてが国境をまたいで隣国の中国やベトナムに輸出されており、さらに新しい現金収入源としての価値が地域に生み出されるなどしており、ラオス北部山地部の村落の生業動態や森林管理に顕著に影響を及ぼしていた。これらの成果については学会発表、論文等で報告予定である。
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