研究課題/領域番号 |
26870286
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
平井 悠哉 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (90710369)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分裂期染色体 / BDV / RNP |
研究実績の概要 |
真核生物の染色体は細胞分裂時には高度に凝集し,娘細胞に等分配される。細胞分裂時の染色体上にはRNA,あるいはRNAとタンパク質の複合体であるRNP(ribonucleoprotein)の存在が認められるものの,分裂期染色体とRNAあるいはRNPとの関連に関する情報はあまりにも少ない。本研究では,細胞周期を通してクロマチンと相互作用し,さらに分裂期染色体上にそのRNPが局在することが分かっているボルナ病ウイルス(borna disease virus: BDV)のRNPを分裂期染色体と相互作用する核内RNPのモデルとしてとらえ,分裂期染色体と核内RNPの相互作用メカニズムの詳細を明らかにしようとするものである。 まずはBDVのRNPが局在する分裂期染色体の生化学的な単離,精製を行った。単離した分裂期染色体上のRNPの存在を確認した結果,RNPが結合した状態で分裂期染色体を生化学的に単離,精製できることが明らかになった。次に共免疫沈降法により,RNPと相互作用する分裂期染色体上の因子の探索を試みた。その結果,分裂期染色体上においてRNPは,ヒストンだけでなく特定の細胞骨格タンパク質や核タンパク質と相互作用していることが明らかになった。特に細胞骨格タンパク質に関しては,その分裂期染色体上の存在は示唆されていたものの,その存在意義や染色体との相互作用のメカニズムに関しては明らかにされておらず,今後の研究対象とする予定である。 一方で,分裂期染色体上のBDVのRNPの詳細な局在を,超解像顕微鏡法により観察することを試みた。その結果,分裂期染色体上では,RNPは間期とは異なった形態をとっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,(1)RNP-染色体間相互作用に関与する因子の同定,(2)同定された因子が担う,RNP-染色体間相互作用に対する役割の解析,および(3)RNPと同定された因子の,分裂期における相互作用の時空間的解析,の3つに要約される。本年度においては,とくに(1)の相互作用関連因子の同定に焦点を当てた。その結果,ヒストンといった染色体を構成しているタンパク質だけでなく,細胞骨格タンパク質や特定の核タンパク質といった,これまでには分裂期染色体との関連が明らかにされていなかった因子を同定することができた。こうした因子の同定は,相互作用メカニズムの詳細な解析といった次のステップに進むために必要不可欠な作業であるため,特定の因子の同定によって次年度の研究計画の実施にスムーズに移行できるものと思われる。一方で,超解像顕微鏡法により,分裂期染色体上のRNPの詳細な局在を観察することを試みた。これは当初は研究計画には記載していなかったが,本研究の研究目的を達成するために必要性が生じたために実施した。その結果,核内RNPは,間期と分裂期では異なる形態をとっている可能性を示唆する結果を得ることができた。以上を踏まえ,若干の具体的な研究計画の変更は生じたものの,研究の目的そのものには変更はなく,本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後,まずは同定した因子の分裂期染色体における詳細な局在を,蛍光免疫染色法や種々のプローブを用いた検出,あるいはタイムラプスイメージング等により行う予定である。さらに,進展状況によっては,同定した因子のノックダウン条件下による,RNPの分裂期染色体上の局在や動態を解析する予定である。また,染色体上においてRNPが相互作用する詳細な領域,あるいは染色体上でRNPが相互作用する他の核酸因子を,ハイスループットシーケンシングによって同定することを計画している。同定が成功すれば,同定した領域や因子を,fluorescence in situ hybridizationによる確認を行う予定である。一方で,RNPとヒストンの相互作用メカニズムの詳細を明らかにする必要性も感じられたため,この点に関しても並行して解析を進める予定である。
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