研究課題/領域番号 |
26870289
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
多羅間 大輔 立命館大学, 理工学部, 助教 (30722780)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Hamilton系 / 完全積分可能系 / Lie群 / 冪零Lie群 / 自由剛体 / 安定性解析 / Kummer曲面 / Maxwell方程式 |
研究実績の概要 |
ドイツの研究者と共同で冪零Lie群上の左不変計量に関する測地流の完全積分可能性に関して研究を行っている.これは,Lie群上の自由剛体の力学系の完全積分可能性を冪零Lie群の場合に解析するものに他ならない.任意の冪零Lie環上で最大個数のPoisson可換かつ独立な函数の存在がVergne(1972)によって抽象的に示されている.しかし,測地流との関係は明白ではない.また,Heisenberg群の場合(Kocsard, Ovando, Reggiani(2016)による)を除いては第一積分の具体的な構成も知られていない. そこで,Heisenberg群以外の冪零Lie群上の左不変計量に関する測地流が完全積分可能性であることの証明を,具体的に第一積分を構成することで試みた.これまでの研究で,擬H型と呼ばれるステップ2冪零Lie群上で左不変計量に関する測地流の完全積分可能性を第一積分の具体的に構成によって証明した.また,特別な場合には対応する冪零多様体上の測地流の完全積分可能性も証明された.これらの結果については,冪零多様体の場合の考察を進めた上で論文の投稿を行う予定である. 中国の研究者と行っているLie群上の自由剛体の力学系の安定性解析については,単純Lie群の場合にはCartan部分環ごとに力学系が定まるが,これまでのような特定のCartan部分環のみに限らず任意のCartan部分環に対応するより一般の系に関する考察を継続して行っている. フランスの研究者と行っている剛体の完全積分可能な力学系の複素代数幾何的側面の解析については,LagrangeのコマおよびClebschのコマに関する考察を継続して行っている. 国内の研究者と行っているKummer曲面の幾何学と微分方程式の関連の解明についても,Maxwell方程式との関係やKummer曲面の退化を解析しつつ考察を継続している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自由剛体の力学系の冪零Lie群への拡張とみなされる冪零Lie群上の左不変計量に関する測地流の完全積分可能性について,擬H型2ステップ冪零Lie群の場合の結果を得て,冪零多様体の場合の考察を加えて論文発表を行う予定である. また,中国の共同研究者と行っている単純Lie群上の自由剛体の力学系の安定性解析,フランスの研究者と共同で行っている剛体の完全積分可能な力学系の複素代数幾何的側面についての考察,国内の共同研究者と行っているKummer曲面の幾何学と微分方程式の関係に関する研究も継続して進行中である. 以上より,現在までの研究全体の進捗状況はおおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は28年度に引き続き,冪零Lie群上の左不変計量に関する測地流に対応する冪零多様体上の測地流の完全積分可能性を擬H型Lie群の場合に解明する. また,単純Lie群上の自由剛体の力学系に関する平衡点の安定性については,任意のCartan部分環に対する系に関する解析を行う.特に,古典型Lie群の場合に詳しい計算を行う. 剛体の完全積分可能な力学系については,特にLagrangeのコマ・Clebschのコマに焦点を当ててその複素代数幾何学的側面の解明を目指す. さらに,Kummer曲面の幾何学と微分方程式の関係に関して,Kummer曲面の退化に関する考察を進めて平成27年度に発見した二重ファイバー空間の構造を解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に力学系から現れる幾何構造の研究に関係の深い研究者を立命館大学へ招聘し研究集会を催すこととなり,平成28年度分として使用予定であった一部をこの研究集会に際して使用するため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に生じた次年度使用額は,平成29年6月に「微分方程式と幾何学」研究集会を催し,力学系から現れる幾何構造の研究に関する講演者の招聘旅費として使用する予定である.
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