Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のヘテロダイマーがシグナルユニットであるという仮説を蛍光1分子観察法で検証するため、生細胞中でのGPCRの蛍光ラベル法を検討した。タグ蛋白質分子を結合させても細胞膜に発現することを確認し、蛍光色素で受容体を1:1でラベルすることで、ドーパミン受容体のD1RとD2Rを同一細胞内で二色同時に1分子観察することに成功した。 この細胞を用いて生細胞膜上でのD1RとD2Rのヘテロダイマー形成のダイナミクスを調べた。新たに開発した軌跡の解析法を用い、分子の結合時間を算定すると、D1RとD2Rは寿命約30ミリ秒の極めて動的なヘテロダイマーを形成している事が分かった。内在のリガンドであるドーパミンを加えても動的なヘテロダイマー形成が見られたが、寿命は数倍以上延びて安定化することが分かった。 D1RとD2Rのホモダイマー形成も調べた結果、リガンド添加前にはどちらも寿命が100ミリ秒未満の動的なホモダイマーを形成するが、刺激後はD2Rのホモダイマー寿命が約50%伸び、やや安定化することが分かった。 さらに、すべての輝点のペアを調べて得た距離の分布から、二次元でのダイマー・モノマーの平衡定数を比較する方法も開発し、D1RとD2Rのヘテロダイマー・モノマーの平衡定数をリガンド添加前後で比較した。その結果、リガンド添加後に平衡は約2.5倍変化し、動的なヘテロダイマーの個数が減少することが分かった。 即ち、細胞膜上ではリガンド添加前後を問わずD1RおよびD2Rの動的なホモダイマーとヘテロダイマーが混在していることが分かった。さらに、リガンド添加後にはダイマーがやや安定化し、動的なヘテロダイマーの個数は減少することが分かった。刺激後はダイマーの質的、量的な変化の両方が組み合わさって下流シグナルが生じるが、特にヘテロダイマーの安定化が顕著であることが分かった。
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