研究実績の概要 |
最終年度となる2016年度は、8月~9月にタンザニア連合共和国で補足調査を実施するとともに、成果のとりまとめを実施した。1年目、2年目で収集したデータを整理し、一連の研究成果をもとに、2016年9月にタンザニアにおいて、造林焼畑を基盤とした産業植林による地域の内発的発展に関するワークショップを企画・実施した。このワークショップには、造林焼畑を基盤とした産業植林の先進地域であるンジョンベ州と、近年になって産業植林の取り組みをはじめたルブマ州の行政官、農業普及員、および地域住民、そして東アフリカの農村開発研究を専門とするソコイネ農業大学の研究者が参加した。経済基盤としての林地の持続的な維持管理と水源環境保全の両立や、コミュニティーの共有林の運営を通じた教育・医療・水道などの社会基盤整備への投資に関して、技術面と社会面の双方から意見交換を実施した。その成果は冊子"TAARIFA YA WARSHA:Miti, Maji, na Mazingira"(R. Kurosaki, F. Kondo and J. Nsenga 2017)にまとめた。
また、補足の植生調査の結果、一部のパツラマツ植林地において樹皮が黒変する病害の発生が観察された。住民からの聞き取りによると、枯死に至ることもあるというが、今回の研究期間中には、地域全体での病害発生状況の把握や木材生産へ与える影響の分析まではおこなえなかった。パツラマツの単一林が植林地面積の多くを占める現状では、今後、急速に被害が拡大して地域の社会経済に大きな影響を与える恐れもある。原因の特定と対策の立案、そしてより安定的な産業植林の仕組みづくりにむけて、今後の更なる調査研究が必要であり、ソコイネ農業大学の林学研究者との連携も視野に入れて検討をすすめる。
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