研究課題/領域番号 |
26870295
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 未知数 京都大学, 理学研究科, 助教 (50433313)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジカル欠陥 / 非可換量子渦 / 非可換量子乱流 / ヘリシティカスケード / エネルギースペクトル / 結び目 / 絡み目 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、様々な物理系および相で現れるトポロジカル欠陥について、普遍的に現れる新規なダイナミクスを探求し、統一的に理解することである。本年度は量子渦の典型的な非平衡状態である量子乱流に着目した。量子渦のトポロジカルチャージは系が持つ対称性およびその自発的な破れ方によって決まるが、非可換群で特徴づけられる非可換量子渦となったとき、特に量子渦の衝突ダイナミクスが著しく変化する。具体的には量子渦の空間的なトポロジー(結び目あるいは絡み目構造)を変化させるものがトポロジカルに禁止されることがすでに分かっている。 私は非可換量子渦によって構成される非可換量子乱流の大規模な数値シミュレーションを行い、以下に述べるような結果を得た。非可換量子乱流ではエネルギーだけでなく、量子渦の結び目・絡み目を特徴づける物理量であるヘリシティが新たな保存量として乱流の統計的な性質を支配することが分かった。ヘリシティは量子渦の絡み数と自己絡み数の和として与えられ、非可換量子渦の衝突の前後で保存されるため、可換量子乱流と異なり、系全体の保存量となる。非可換量子乱流では、乱流の最も重要な統計的物理量であるエネルギースペクトルが、従来の乱流の統計則であるコルモゴロフ則には従わず、その原因がヘリシティの保存にともなう、ヘリシティカスケードと呼ばれるカスケード過程によって引き起こされることが分かった。 この結果は乱流を構成する渦のトポロジーを制御することによって、乱流を制御できる可能性を示唆する新たな結果であると言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の1つである、トポロジカル欠陥である量子渦のトポロジーを用いた、新たな非平衡ダイナミクスである非可換量子乱流、およびヘリシティカスケード過程を発見することができた。これはトポロジカルのトポロジーによって非平衡状態を制御している一種のデモンストレーションであり、これもまた当初の目的の1つである。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに得られた結果(トポロジカル欠陥とKosterlitz-Thouless転移との関係、熱力学転移とトポロジカル欠陥の幾何学転移との関係、量子乱流転移、非可換量子乱流)の総括を行う予定である。具体的には 1,量子渦のトポロジカルチャージによってKosterlitz-Thouless転移を示す場合と示さない場合があるが、それが何によって決まるのかを、さらに様々なトポロジカルチャージを用いた数値シミュレーションにを行うことによって明らかにする 2,外力が存在するときの、非平衡状態におけるトポロジカル欠陥の幾何学転移および熱力学転移との関係を調べるべく、数値シミュレーションを行う。 3,乱流転移は量子流体のみならず古典流体でも起こることが、近年の実験および数値計算から明らかになりつつあるが、量子乱流転移と古典乱流転移との関係を探るべく、古典乱流で行われるような状況に対応した数値シミュレーションを量子乱流において行い、比較する。 4,非可換量子乱流がどういった系で実現可能であり、ヘリシティカスケード過程がどのようなダイナミクスとして観測可能なのかを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入した計算機が故障したため、その修理代が新たに生じてしまい、当初購入予定だった計算機のためのメモリが購入不可能となってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
追加で数値計算機を購入する
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