研究課題
沸点以上の温度で加圧することにより液体状態を保った流体のことを亜臨界流体と呼ぶ。本研究では、糖類をモデル物質として亜臨界含水エタノールなどの中での反応挙動を測定した。含水エタノールを用いてグルコースを亜臨界処理を実施すると、フルクトースの収率が改善し、ごく少量のマンノースも生成する。その改善の理由は明らかではないため、エタノールの影響を検証した。含水エタノール中のエタノール濃度が上がるほど、異性化の速度定数は増大した。特に、マンノースからフルクトースへの変換は顕著に加速した。一方、分解の速度定数も増大したが、異性化に比較して顕著ではなかった。本反応を速度解析した結果、糖のアルカリ異性化と同等の機構で進むと推察された。そこで、他の単糖にも亜臨界処理の適用を試みた。ガラクトースなどの単糖を亜臨界含水エタノール中で処理したところ、対応するフルクトース型の希少糖である、タガトースなどが高い収率で生成した。また、収率は高くないが、マンノース型の希少糖(タロースなど)も生成が確認された。さらに、二糖異性化への本法適用の可否を検討したところ、同様の反応が進行し、希少二糖であるマルツロースなどが得られた。これらの反応は、他のアルコールでも起こる可能性が考えられたため、各種アルコールを用いて、グルコースを亜臨界処理したところ、フルクトースが優位に生成した。さらに、最終年度において、亜臨界含水アセトニトリル中での異性化挙動を評価した。その結果、亜臨界含水エタノール中と同様に対応する希少糖が生成した。このことは、一般の有機溶媒の使用により、希少糖の収率を改善できることを示している。また、併せて希少糖の生成に関する速度解析も実施し、各反応過程の速度定数および活性化エネルギーを算出することができた。このように亜臨界含水エタノール処理は、希少糖の製造に有望な手段として、今後の展望が期待できる。
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