反強磁性体とは、隣り合う局在スピンが反対方向を向いて整列しているため、全体として自発磁化を持たない物質である。理論的には、スピン流と反強磁性体磁化との相互作用(スピントルク効果)により磁化の制御が可能であることが示されており、実験的評価が期待されている。本研究を通して、反強磁性体に作用するスピントルク効果の定量評価方法を確立し、これを用いて、反強磁性体においてスピントルク効果が発現すること、磁化方向に対応して異方性磁気抵抗効果が発現することを実験的に見出した。これらの成果により、反強磁性体におけるスピン相互作用の理解が深まり、反強磁性体がスピントロニクスにおいて新たな機能材料たることを示した。
|