研究実績の概要 |
2015年度には酸性pHに応答して構造変化しエンドソーム膜を破壊するアニオン性高分子(polyanion, PA)とカチオン化高比重リポタンパク質(cationized high-density lipoprotein, catHDL)間の複合体形成を確認した。また、共焦点蛍光顕微鏡によりcatHDL/PA複合体がエンドソームから細胞質へと移行することを確認した。 2016年度には、蛍光性の抗がん剤であるドキソルビシンを内包したcatHDL(DXR@catHDL)を調製し、PAとの複合体を形成させた後、薬物の細胞内動態の観察を行った。その結果、DXR@catHDLに比べて、DXR@catHDL/PAにおいてDXRのエンドソーム内への局在が減少しており、エンドソームからの脱出を促進していることが明らかとなった。一方、細胞内取り込み量においては、DXR@catHDL/PAがDXR@catHDLに比べて減少しているにもかかわらず、同等の薬効を示していた。これはDXRのエンドソーム脱出により低い取り込み量による薬効の低下を補ったからであると考えられる。
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