研究課題
環境電力で動作する組込みシステムを対象としたアルゴリズムを開発した.1) 環境電力のみで組込みシステムを稼働することを目的とし,アプリケーションの動作シナリオ決定アルゴリズムを開発した.アプリケーションの振る舞いを実行可能点という概念によって定義し,実行可能点においてタスクの実行を適切に選択する.実行時最適化を担うことで,システムの提供するサービス品質を保証しつつ半永久的な稼働を実現する.本研究で得られた成果は,2014年8月に開催された査読付き国際会議ICESSで発表している.2) 同一命令セットヘテロジニアスマルチコアと呼ばれるプロセッサアーキテクチャに着目し,本アーキテクチャにおける新たな動的・電圧周波数制御技術を提案した.同一命令セットヘテロジニアスマルチコアとは,高性能コアと高電力効率コアとを1対1に対応づけたコアペアを構成し,コアペア内の動作コアを適切に切り替えることができる.提案手法としては,選択される動作コアおよびコアペアへの供給電力/動作周波数を適切に制御することで,組込みシステムの消費エネルギー最適化を実現する.3) 組込みシステムの要求される信頼性を保証しつつ消費エネルギーを最小化するコンパイラ技術を開発した.具体的には,部分的に高信頼な領域を持つオンチップメモリの活用に着目する.本メモリアーキテクチャは,高信頼だが消費電力の大きいメモリ領域および信頼性は低いが消費電力が小さいメモリ領域を持つ,メモリ配置最適化技術として,要求として与えられる信頼性を制約として消費エネルギーが最小化されるように,いずれかの領域にプログラムコードの配置を決定する.
2: おおむね順調に進展している
実行時最適化のためのアルゴリズムを開発して成果発表できたことは,当初計画通りの進捗である.また,研究2)を通して,同一命令セットヘテロジニアスマルチコア上でのタスクスケジューリングを評価できるシミュレータを開発した.このソフトウェアベースのシミュレータによって,提案する動的・電圧周波数制御アルゴリズムの消費エネルギーの算出が容易となった.この開発成果もも,研究計画から見て良好な成果であるといえる.ただし,実機ベースでの評価環境の構築に関しては,作業進捗が遅れている.これは,当初導入を予定していた評価キット製品の販売が終了してしまっていることに起因する.
実行時最適化のアルゴリズムについては,今後,最適化効果のさらなる向上を目指し,アルゴリズムのさらなる洗練を行っていく予定である.また,動的・電圧周波数制御技術の評価のためのタスクスケジューリング・シミュレータについても,環境電力で動作する組込みシステムに対して適用できるよう,改良を重ねていく予定である.進捗が遅れている評価環境の構築に関しては,新たな評価キットの調査および機種選定に取り組み,もしくは,独自の評価キットの開発も視野に入れる.今後,評価環境の構築に注力する必要がある.
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IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E97-A ページ: 2477-2487
10.1587/transfun.E97.A.2477
巻: E97-A ページ: 2498-2506
10.1587/transfun.E97.A.2498