研究課題/領域番号 |
26870305
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野 容照 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (00705436)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 朝鮮 / 植民地 / ナショナリズム / スポーツ / 文化交流 / 野球 / 甲子園 / メディア |
研究実績の概要 |
近年、大韓民国において野球は、2008年の北京オリンピックでの優勝などを背景として人気が高まり、サッカーと並ぶ韓国の国民的スポーツと評価されるようになった。しかし、「野球(Baseball)」という競技名から「安打(Hit)」といった専門用語に至るまで、韓国では明治以降に日本で翻訳された漢字の野球用語を使ってきた。韓国の野球が国内外で注目を集めながらも、かつての統治国である日本の野球用語を使い続けているという状況を克服するために、2000年代後半から韓国では野球用語の改訂運動が起こった。その結果、「防御率(Earned run avarage)」が「平均自責点」に変更されるなど、韓国独自の野球用語が増え始めた。つまり、日本式野球用語を使うことは「国民的スポーツ」となった韓国野球にはそぐわないものと認識され、そこからの脱却――韓国野球の脱日本化――が目下の韓国のスポーツ界の重要な課題となっているのである。 しかし、韓国野球の現在に関する議論が活発化する一方で、アメリカ生まれの野球が韓国ではなぜ日本化したのか、そもそも、朝鮮半島に野球はどのようにして伝わり、今に至っているのかという歴史的背景については、充分に明らかになっていない。 本研究は朝鮮にアメリカ起源の野球がどのように流入し、なぜ日本化したのか。その歴史的経緯の解明を目的としている。 初年度においては1900年代にベースボールの伝播ルートがアメリカ経由から日本経由に変わる経緯を解明した。それを踏まえて二年次は、1910年の韓国併合後の日本の朝鮮統治政策が朝鮮の野球に及ぼした影響を、日朝の民族対抗戦、部活動に対する総督府の措置などの観点から分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は朝鮮に野球が伝わった1900年代初頭から1945年までを対象としている。初年度では1900年代と1920年代の分析を行ったが、その中間の時期にあたる1910年代を分析した。また、並行して1937年以降の戦時期についても資料収集が大幅に進展し、研究の完成に向けて順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
三年次は、初年と二年次に発表した三篇の論文(1900年代、1910年代、1920年代)の続き、すなわち1930年代の満洲事変から戦時期についての分析を終え、研究成果を取りまとめる。戦時期については論文として発表することはせず、既発表の三篇の論文とあわせて、単行本として取りまとめる予定で考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
韓国出張の際、一部の図書館で資料の利用に関する制度が変更されていたため、複写できなかった資料があった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の複写代にあてる。
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