研究課題
平成28年度は、放射光における実験技術の進展により可能となった、X線小角散乱(SAXS)とX線回折(XRD)の同時測定技術を用いて、鉄鋼における相界面析出のその場測定を行った。放射光では、中性子と比較して試料サイズを小さくする必要があるが、短時間で測定できるという利点がある。SPring-8でSAXSとXRDの同時その場測定を行った結果、XRDプロファイルの変化から、オーステナイト-フェライト間の変態を捉えることができた。一方、SAXSでは加熱による粗大な析出物の消失を観測することができた。また、冷却時には、散乱ベクトルの大きな領域で散乱強度の増大が観測され、析出初期のサイズの小さい炭化物粒子が形成されていることが示唆された。炭化物粒子のサイズは予想よりも小さく、現在詳細な解析を進め、追加の実験を計画中である。また、パルス中性子小角散乱装置を利用して実験を行い、中性子小角散乱(SANS)とブラッグエッジ同時測定技術の開発を進めた。研究期間全体を通じて、鉄鋼材料のSANSとブラッグエッジの同時測定及び解析の技術を確立することができた。特に、鉄鋼材料のブラッグエッジ解析では磁気散乱を考慮する必要があることと、中性子透過率スペクトルにはブラッグエッジと同様にSANSによる減衰の寄与があり、これを解析することでSANSの情報が得られることを世界に先駆けて明らかにした。また、中性子透過率スペクトルを用いた新しい鉄鋼材料のSANSイメージング測定手法の検討を行った。これらの研究成果について、論文発表と学会発表を行った。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Journal of Applied Crystallography
巻: 50 ページ: 334-339
10.1107/S1600576717000279
巻: 49 ページ: 1659-1664
10.1107/S1600576716013133
日本中性子科学会誌 波紋
巻: 26 ページ: 170-173
中性子産業利用推進協議会季報「四季」
巻: 31 ページ: 3-4
MLF Annual report 2014
巻: - ページ: 4-5