本研究の目的は、スクラッチ欠損(細長い引っ掻き傷)が入った画像の修復補完を目的とした、インペインティングの提案である。 平成26年度の研究計画は、画像データベースの作成と、研究目的を達成する方式の提案であった。研究は計画通りに遂行され、2014年の7月に『空間距離に基づくスクラッチ欠損補間』を発表した。この方式は、従来のインペインティングでは補完することができない広範囲・高密度のスクラッチ欠損を含む画像が補完できる。その有効性は、従来の主要なインペインティングと比較しながら、定量的に示した。その後に、上記の応用方式として『絵画の質感を考慮したインペインティング』を発表した。この研究は、本研究の汎用性を示すことを目的としたものであり、損傷した絵画の修復を行う方式である。この方式は絵画技法や絵画の質感を反映した処理を導入することで、より絵画らしい修復を行うことができる。本発表において、本研究が実際の損傷修復を行った場合、それが効果的に行えることを定量的に示した。この成果は、本研究の実用性と応用性の高さを示すうえで重要な意義がある。 平成27年度(最終年度)では、当初の目的の一つであった、初年度に提案した方式の上位互換方式に取り組んだ。その結果、広範囲・高密度のスクラッチ欠損にくわえて、領域面積の大きな欠損を含む画像を、高精度に補完できる方式を完成させることができた。本方式はまだ外部発表に至っていないが、現在、発表準備を進めている段階である。
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