研究課題/領域番号 |
26870330
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 賢臣 大阪大学, 学内共同利用施設等, 講師 (20445844)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射性ヨウ素 / 陸水域 / 植物 / 濃縮 |
研究実績の概要 |
本研究は福島第一原子力発電所の事故に伴い、環境中に放出された放射性ヨウ素(I-131)について、陸水域での主に植物体への移行や濃縮挙動について調査を行う事を主題としている。この研究の意義としては福島原発の事故による初期における被ばくの正確な算定に役立てる事にある。初期被ばくに最も寄与する核種としてはI-131が知られているが、その算定には現在はI-129が用いられている。これにはI-131が短半減期核種(8日)である事が関係している。現在は福島第一原子力発電所事故由来のI-131が完全に消滅しているため、サンプルを採取し測定を行ってもI-131は全く検出できなく、当時の様子はわからない。そこで、サンプル中の現在のI-129を測定する事によって、事故当時の I-129 / I-131 の比率を基に当時のI-131の量を算出し、その算出量から被ばく量を推定する方法がとられている。この方法はI-129が原子力発電所から放出され、環境中に沈着した後も事故当時の状態のままで存在している事が前提条件となる。しかし、セシウムやストロンチウムといった様々な核種と同様にヨウ素は環境中を様々な条件によって移動する事も良く知られている。そのためヨウ素が環境中をどのように移行するかなどの情報を知っておく事は非常に重要な事となる。しかしながら、このようなヨウ素の挙動については海水域では様々なデータがあるが、陸水域については、そもそもヨウ素の発生源が乏しい事からほとんど調査されていないのが現状である。そこで、陸水域におけるヨウ素の環境動態のうちどのような植物種がどの程度のヨウ素濃縮を行うか等の基礎的な情報を収集する事は非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目標は、実験に供する植物種についての選定やサンプリング、また研究期間中でのそれらの植物種の生存方法について確立する事である。 植物試料については近畿圏で採取できる植物を購入する形をとることにした。この理由としては、一定の条件のもとで生育した植物試料である方が実験時の誤差を減らせるためでありまた、長期にわたって同じ種を実験に供することができるためである。植物種の選定については安定ヨウ素を添加した培養液中で培養する事によって、ある程度の濃縮を行う種を選定した。また、実験期間が3日から4日程度であることから、実験中においては水温に気を付けておけば十分に生育していることも確認できた。これらのことから、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度に行った植物種の選定結果より、まずは4つの植物種について放射性ヨウ素を用いた添加培養実験を行う。使用する放射性ヨウ素としては、I-125およびI-131を考えている。これらを用いる理由は測定の簡便性からである。本来ならばI-129を用いるべきではあるが、測定の難易度から簡単に行えるものではない。しかし、I-125およびI-131とI-129の質量数の差はほとんどない事と、同元素であることから環境中での振る舞いについては同じであると考えられることから、これらを使用するのは妥当であると言える。 添加培養後はそれらを測定しどの程度のヨウ素濃縮が見られたかを調査していく。また、これらが終了した際には、さらに植物種の幅を広げ同様の実験をする事により、それらに種類間の違いなどを調査していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に計画していた安定ヨウ素を用いた実験で使用する水槽について、当初は総額70万円相当を見込んでいたが、予想よりも低額で済んだため次年度使用額がプラスとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は使用する施設の都合上、水温安定期を購入する必要が浮上したため前年度分をそれの購入費に充てる予定である。また、植物の生育環境をより良くするための照明費にも充当する予定である。
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