ナノポーラス金 (NPG) 触媒は、一酸化炭素中毒の原因物質であるCOの除去反応 (CO酸化反応) において室温以下から高い活性を示すことが報告されており、ナノ空間を反応場とする新規触媒材料として応用が期待されている。しかしながら、触媒活性の発現機構についてはまだ明らかになっておらず、活性サイトとして、双晶などの欠陥構造、特定の結晶面、触媒調製時に残留する異種金属成分など様々な可能性が提案されている。本年度は、残留金属成分がポーラス金に担持されている担持金属触媒と捉えることができるNPG触媒に着目し、反応ガス存在下でのナノ構造について検討した。 濃硝酸溶液によりAu-Ag合金薄膜からAg成分を溶出することでNPG触媒を調製した。電子線照射の影響を考慮した上で、収差補正器を搭載した環境制御透過電子顕微鏡 (Cs-corrected ETEM) によりガス雰囲気下でのナノ構造の原子分解能観察を行った。酸素雰囲気やCO酸化反応雰囲気などのガス条件、および、NPG触媒の露出結晶面 ({111}、{100}など) によって表面構造が異なることが明らかになった。 本研究では、ガス雰囲気によって担持金属触媒のナノ構造が大きく変化することが明らかになり、触媒の活性構造を解明するためには、その場解析が不可欠であることが示された。本研究で取り組んだように、化学反応中の触媒のナノ構造を解析することで、様々な固体触媒の活性構造・反応メカニズムが明らかになり、今後の新規高性能触媒の開発につながると期待される。
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