本研究では、フッ化水素酸と過酸化水素混合溶液に多結晶シリコン基板を浸漬させ、その表面に白金触媒を接触させることで、シリコン基板表面に白金触媒の形状を転写し、太陽電池にとって重要な光閉じ込め構造を形成する。平成26年度は白金の転写に必要な反応条件を検討し、その条件の下、ピラミッド構造のシリコン基板上に窒化膜、白金を成膜することで作製したピラミッド構造を有する白金触媒で転写を検討し、ピラミッド構造の転写が可能なことを確認した。しかし、長時間の転写の反応を行なった場合、フッ化水素酸に窒化膜が溶解し、白金の剥離が生じた。そこで平成27年度は、白金板自体にストライプ構造の凹凸を切削加工により形成し、転写反応を検討した。白金の凹凸形状については、転写により形成され得るシリコン形状を光線追跡シミュレーションで検討し、光閉じ込め効果が最大限に得られるV字溝ストライプ構造とした。切削により作製したV字溝ストライプ構造の白金触媒を用い転写反応を検討し、白金構造がシリコン基板に転写可能なことを確認した。また反応に伴う白金触媒の溶解は見られず、継続的に反応させることも可能であり、白金とシリコンを接触させ反応、その後ギャップをとり薬液を循環させるという動作を繰り返すことで、白金触媒とシリコン基板の間に薬液を浸透させることも可能となった。太陽電池作製に関しては、白金触媒とシリコン基板のギャップを面内で常に均一に制御することが困難であったため、白金触媒の形状が転写される部分が一部となり、作製には至らなかった。しかし、転写による表面テクスチャーの形成が可能であることが実証されたため、反応駆動機構の制御性を向上させることで高効率光閉じ込め構造の太陽電池作製の可能性が示唆された。
|