研究課題
DNAのメチル化修飾やヒストンの翻訳後修飾を始めとするエピジェネティックなマークは細胞分化過程のみならず、刺激や環境の変化によってもダイナミックに変化することが明らかとなってきている(Ueda, J., et al., Mol. Cell. Biol., 2014)。しかし、現在エピジェネティクス研究で広く用いられている実験手法は、サンプルを固定してしまうことから、エピジェネティクスの動態解析には必ずしも向いていない。また、免疫染色法以外の手法では多数の細胞の平均を扱うため、マイナーな細胞集団の挙動は見過ごされてしまう。このような問題を克服するため、本申請課題では、エピジェネティクな変化を可視化したレポーターマウスを開発し、それらを用いて細胞の分化過程、病態(特に癌化)の進行過程のエピジェネティクス及びクロマチンの動態解析を行うことを目的としている。既にDNAのメチル化修飾の変化を生きたままマウスの全身の細胞で解析できる「メチロー(MethylRO:Methylation probe in ROSA26 locusの略)」マウスを開発し、それを用いた着床前初期胚発生過程のライブセルイメージング解析を行い、論文として発表した(Ueda, J., et al., Stem Cell Reports, 2014;上田 他、実験医学、2015)。いくつか技術的に乗り越えなければならない課題はあるが、将来的にはこれらのエピジェネティクス・レポーターマウスをいくつかの病態モデルマウスと組み合わせることで、病態進行過程のエピジェネティクな変化を生きたまま追跡・解析することを計画し、目指している。
2: おおむね順調に進展している
既にDNAのメチル化修飾の変化を生きたままマウスの全身の細胞で解析できるメチローマウスを開発し、それを論文として発表した。また、東京工業大学の木村宏博士、佐藤優子博士、近畿大学の山縣一夫博士との共同研究によって、ヒストンの翻訳後修飾を可視化したマウスを2系統樹立することに成功しており、現在これらのマウスを用いて発生分化過程のエピジェネティクス動態解析を進めている。当初計画していたエピジェネティクス・レポーターマウスをいくつか開発できたことから、既に目標は半分以上達成できたものと考え、「おおむね順調に進展している」と判断した。現在は申請課題の後半部分に相当する、病態進行過程のエピジェネティクス動態解析に焦点を絞り、準備を進めている。
2014年度はエピジェネティクス・レポーターマウスの開発に主眼を置いていたが、2015年度は病態進行過程のエピジェネティクス動態解析に焦点を絞り研究を進めていく。現在、病態進行過程の解析を行うために、メチローマウスをいくつかの発癌モデルマウスと交配している。病気を発症するのに少々時間(数ヵ月)を要するため、2015年度の後半から本格的な解析を始められるものと考えている。
年度途中で大阪大学から中部大学に所属が変わり、実験を2ヶ月ほど一時中断する必要があったため、当初計画していた支出額よりも少なくなった。
2015年度に繰り越した分は、中部大学で実験をセットアップするために使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Stem Cell Reports
巻: 2 ページ: 910-924
10.1016/j.stemcr.2014.05.008.
Mol Cell Biol
巻: 34 ページ: 3702-3720
10.1128/MCB.00099-14.
http://researchmap.jp/wiz/
http://www.chubu.ac.jp/about/faculty/profile/00c3921eaa0fccdadf252e21a8db3e9699bdef39.html