エピジェネティクス可視化マウスの開発とそれらを用いた発生・脱分化過程の動態解析

2015 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26870343
• 研究機関: 中部大学
• 研究代表者: 上田 潤 中部大学, 実験動物教育研究センター, 助教 (80450394)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: エピジェネティクス / ライブセルイメージング / DNAのメチル化

研究実績の概要

ここ最近の研究からエピジェネティクスは発生・分化過程のみならず、腫瘍形成過程などの病態進行過程においてもダイナミックに変化することが明らかとなってきている。発生・分化過程のエピジェネティクス動態を解析するために、これまでに申請者らはDNAのメチル化修飾を生きたマウス個体の全身で可視化したレポーターマウスを開発してきた。本研究では新たなエピジェネティクス・レポーターマウスを作製すると共に、これらのレポーターを用いて体細胞のリプログラミング過程並びにマウス着床前初期胚の発生過程におけるエピジェネティクス・リプログラミングの動態解析を、ライブセルイメージング手法を用いて行うことを目的としている。

当初計画していたような、エピジェネティクス・レポーターマウスを作製することはまだできていないが、東京工業大学の木村宏博士、佐藤優子博士、近畿大学の山縣一夫博士との共同研究によって、ヒストンの翻訳後修飾を可視化したレポーターマウスの開発に成功した。また、本研究期間中にメチル化DNAを可視化したレポーターマウスの仕事を論文として発表することができた。このマウスを用いて初期胚発生やES細胞の樹立過程のライブセルイメージング解析を行ったところ、細胞が分化するに伴ってメチル化DNAが集積するヘテロクロマチンが明瞭になっていく（固定化されていく）ことが明らかとなった。即ち、メチル化DNAの増減だけでなく、クロマチン構造そのものが細胞分化の指標となることを明らかにした。さらに、メチル化DNAのレポーターマウスと発がんモデルマウスを掛け合わせて腫瘍内のメチル化DNA及びヘテロクロマチン構造を調べたところ、正常細胞とは異なることが明らかとなった（未発表）。現在、「不完全なリプログラミング過程と考えられる」発がん過程のメチル化DNAの動態を解析するための準備を進めている。

研究成果

• [国際共同研究] Cancer Science Institute of Singapore/National University of Singapore(Singapore)
  • 国名: シンガポール
  • 外国機関名: Cancer Science Institute of Singapore/National University of Singapore
• [雑誌論文] The impact of mechanical stress on stem cell properties: The link between cell shape and pluripotency. (2016)
  • 著者名/発表者名: Ho, J.C., Ueda, J., and Shimizu, T.
  • 雑誌名: Histol. Histopathol. 巻: 31 ページ: 41-50
  • DOI: 10:14670/HH-11-665.
  • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] ライブセルイメージングを用いた胚の質評価と応用 (2015)
  • 著者名/発表者名: 八尾竜馬，上田潤，小林徹也，堀真由子，山縣一夫．
  • 雑誌名: Journal of Mammalian Ova Research 巻: 32 ページ: 149-157
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] Hypoxia Mediates Tumourigenesis via the H3K9 Epigenetic Regulators G9A and JMJD1A. (2016)
  • 著者名/発表者名: Ho, J.C., Ueda, J., Lee, K.L., Yang, H., and Poellinger, L.
  • 学会等名: Keystone Symposia ‘Chromatin and Epigenetics’
  • 発表場所: Whistler Conference Centre, Whistler, British Columbia, Canada.
  • 年月日: 2016-03-20 – 2016-03-24
  • 国際学会
• [学会発表] Dynamics of methylated DNA in ES cell replication and differentiation revealed by live-cell imaging. (2016)
  • 著者名/発表者名: Hoida, K., Ueda, J., Ohinata, Y., Takarada, D., Tokoro, M., Hosoi, Y., and Yamagata, K.
  • 学会等名: International Symposium “Epigenome Dynamics and Regulation in Germ Cells 2016”
  • 発表場所: Clock Tower Centennial Hall, Kyoto University, Kyoto, Japan.
  • 年月日: 2016-02-17 – 2016-02-19
  • 国際学会
• [学会発表] Testis-specific histone variant H3t is essential for the entry into spermatogenesis. (2016)
  • 著者名/発表者名: Ueda, J., Harada, A., Urahama, T., Machida, S., Maehara, K., Horikoshi, N., Osakabe, A., Taguchi, H., Tanaka, H., Tachiwana, H., Yao, T., Yamada, M., Iwamoto, T., Isotani, A., Ikawa, M., Tachibana, T., Kimura, H., Ohkawa, Y., Kurumizaka, H., and Yamagata, K.
  • 学会等名: International Symposium “Epigenome Dynamics and Regulation in Germ Cells 2016”
  • 発表場所: Clock Tower Centennial Hall, Kyoto University, Kyoto, Japan.
  • 年月日: 2016-02-17 – 2016-02-19
  • 国際学会
• [学会発表] マウス精巣特異的ヒストンH3バリアントであるH3tは精子形成過程に必須である (2015)
  • 著者名/発表者名: 上田潤，浦浜嵩，原田哲仁，町田晋一，前原一満，堀越直樹，八尾竜馬，山田みなみ，岩本隆司，磯谷綾子，伊川正人，立花太郎，木村宏，大川恭行，胡桃坂仁志，山縣一夫．
  • 学会等名: 日本分子生物学会年会・日本生化学会大会合同大会BMB2015
  • 発表場所: 神戸ポートアイランド，兵庫．
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] 心筋特異的miR-143トランスジェニックマウスではヘキソキナーゼ２発現低下と相関して拡張型心筋症が発症し，ACE阻害剤で改善する． (2015)
  • 著者名/発表者名: 岩本隆司，上田潤，高岡祐司，松山留美子，野田明子，喬善楼，上山知己，安達興一．
  • 学会等名: 日本分子生物学会年会・日本生化学会大会合同大会BMB2015
  • 発表場所: 神戸ポートアイランド，兵庫．
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] Pasteurella pneumotropica感染後の対応について－ソフト酸化水を使用したクリーニング操作の検討－ (2015)
  • 著者名/発表者名: 長原美樹，上田潤，松永歩，石坂みゆき，藤田芳顕，岩本隆司．
  • 学会等名: 第49回日本実験動物技術者協会総会
  • 発表場所: 静岡県コンベンションアーツセンター，静岡．
  • 年月日: 2015-10-09 – 2015-10-10
• [学会発表] Mouse testis specific histone H3 variant, H3mmT is essential for spermatogenesis and ensures the entry into meiosis. (2015)
  • 著者名/発表者名: Ueda, J., Urahama, T., Harada, A., Machida, S., Maehara, K., Horikoshi, N., Osakabe, A., Tachiwana, H., Yao, T., Iwamoto, T., Isotani, A., Ikawa, M., Tachibana, T., Kimura, H., Ohkawa, Y., Kurumizaka, H., and Yamagata, K.
  • 学会等名: The 40th Naito Conference ‘Epigenetics – From Histone Code to Therapeutic Strategy’
  • 発表場所: Chateraise Gateaux Kingdom SAPPORO, Hokkaido, Japan.
  • 年月日: 2015-09-15 – 2015-09-18
  • 国際学会
• [学会発表] Visualization of Dynamics of Methylated DNA in living cell and animal. (2015)
  • 著者名/発表者名: Ueda, J., Maehara, K., Mashiko, D., Ichinose, T., Yao, T., Hori, M., Sato, Y., Kimura, H., Ohkawa, Y., and Yamagata, K.
  • 学会等名: International Symposium on Chromatin Structure, Dynamics, and Function
  • 発表場所: Awaji Yumebutai International Conference Center, Awaji Island, Hyogo, Japan.
  • 年月日: 2015-08-23 – 2015-08-26
  • 国際学会
• [学会発表] Mouse testis specific histone H3 variant, H3mmT is essential for spermatogenesis and ensures the entry into meiosis. (2015)
  • 著者名/発表者名: Ueda, J., Urahama, T., Harada, A., Machida, S., Maehara, K., Horikoshi, N., Osakabe, A., Tachiwana, H., Yao, T., Iwamoto, T., Isotani, A., Ikawa, M., Tachibana, T., Kimura, H., Ohkawa, Y., Kurumizaka, H., and Yamagata, K.
  • 学会等名: International Symposium on Chromatin Structure, Dynamics, and Function
  • 発表場所: Awaji Yumebutai International Conference Center, Awaji Island, Hyogo, Japan.
  • 年月日: 2015-08-23 – 2015-08-26
  • 国際学会
• [学会発表] Mouse testis specific histone H3 variant, H3t is essential for spermatogenesis and ensures the entry into meiosis. (2015)
  • 著者名/発表者名: Ueda, J., Urahama, T., Harada, A., Machida, S., Maehara, K., Horikoshi, N., Osakabe, A., Tachiwana, H., Yao, T., Iwamoto, T., Isotani, A., Ikawa, M., Tachibana, T., Kimura, H., Ohkawa, Y., Kurumizaka, H., and Yamagata, K.
  • 学会等名: International Symposium ‘Non-coding DNA and Chromosomal Integrity’
  • 発表場所: Awaji Yumebutai International Conference Center, Awaji Island, Hyogo, Japan.
  • 年月日: 2015-08-07 – 2015-08-08
  • 国際学会
• [学会発表] 常夏の国シンガポールでの短すぎた人生の夏休み (2015)
  • 著者名/発表者名: 上田潤
  • 学会等名: 新学術領域研究「クロマチン動構造」若手の会 第三回ワークショップ，クロマチン研究最前線～海外での研究生活で学んだことを活かして～
  • 発表場所: 早稲田大学，東京．
  • 年月日: 2015-07-29 – 2015-07-29
  • 招待講演
• [学会発表] 腫瘍形成過程，発生過程でのエピジェネティクス動態解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 上田潤
  • 学会等名: 第3回がんと代謝研究会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂交流ホール，石川．
  • 年月日: 2015-07-16 – 2015-07-17
  • 招待講演
• [学会発表] マイクロRNAトランスジェニックマウスに発症する拡張型心筋症の解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 岩本隆司，上田潤．
  • 学会等名: 第13回がんとハイポキシア研究会
  • 発表場所: 国立遺伝学研究所講堂，静岡．
  • 年月日: 2015-06-05 – 2015-06-06
• [図書] 実験医学 2015年2月号 (2015)
  • 著者名/発表者名: 上田潤，前原一満，大川恭行，山縣一夫．
  • 総ページ数: 137(88-96)
  • 出版者: 羊土社
• [図書] 医学のあゆみ 2015年5月9日号 (2015)
  • 著者名/発表者名: 上田潤，山縣一夫．
  • 総ページ数: 70(53-54)
  • 出版者: 医歯薬出版
• [備考] researchmap
  • URL: http://researchmap.jp/wiz/