天然にみられる生体高分子は主鎖に不斉点を有した光学活性高分子であり、その不斉情報 が全体のコンフォメーションを制限し、精密な立体構造や特異的な機能発現を可能にしている。人工系においても、光学活性高分子は新規材料への展開を目指し研究されている。当研究室ではこれまでに、面不斉シクロペンタジエニルルテニウム錯体 ((R)-I)を開発し、これを触媒とする不斉アリル位アミド化反応を不斉重合に応用することによって、主鎖の不斉点が精密に制御された光学活性高分子(poly-1)の合成に成功している。poly-1 は構成単位に末端二重結合を有しおり、光学活性高分子の容易な分子変換、更には機能化が期待される。昨年度は、Thiol-ene 反応によって側鎖に様々な置換基が導入できることを明らかにしている。 本年度は、モノマー単位内に存在する N-アルコキシアミド骨格を、より平面性の高いアミド骨格へと変換することによって、高分子主鎖の回転自由度を低下させ、高分子全体の構造制御を試みた。変換反応としてSmI2による還元反応を選択し、poly-1に対してチオールエン反応によりドデシル基を導入したpoly2aのアミド化反応を行った。その結果アミド化率90%で反応は進行しポリアミド(poly-3a)を得た。poly-3a は、226 nm にUVの吸収極大が見られ、長波長側に新たな吸収が見られた。CD では強い分裂型コットン効果が 260 nm 及び 235 nm にみられた。これらのスペクトルは低分子モデル化合物と大きく異なることから、高次構造の形成が示唆された。
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