研究課題/領域番号 |
26870347
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
傍島 靖 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40397691)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラスマCVD / アモルファスシリコン / アモルファスシリコン合金 / 薄膜シリコン / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
本年はナノ結晶シリコン太陽電池用界面層としての利用を目的としたアモルファスシリコン系ワイドギャップ材料の高品質化を検討した。従来のアモルファスシリコンは原料であるSiH4がプラズマ中で生成される電子との衝突・分解過程を経てSiH3が主たる製膜前駆体として膜成長表面にてSi-H結合のHと脱離・吸着反応を生じて膜成長を生じるというメカニズムがほぼ確立しているため、SiH4と同時にCO2やCH4を混合したプラズマにて生成されるa-SiO:Hやa-SiC:H等の材料は1)各分子の電子との励起・分解過程の考察と2)SiH3ラジカルとの2次反応を考慮することで、膜成長過程を考察することが出来る。 例えばCO2の場合は生成されると予想される化学種はCOまたはOであるが、SiH4からの生成物の一つであるHと結合したOHが主な製膜前駆体となっており、SiH4が枯渇しやすい条件であるということがOESおよび基礎物性評価により明らかとなった。高品質化のためには、このSiH4の枯渇状態を防ぐ製膜条件を用いることで、高品質a-Si:Hとほぼ変わらない膜中欠陥密度2 x 10^15 cm^-1程度のa-SiO:Hの作製を実現した。一方a-SiC:HではSiH4から生じる短寿命反応種とCH3との反応で二量体(H2SiCH3、HSiCH3)化学種が膜中に入り込み、膜物性に大きな影響即ち膜中欠陥量の大幅な増加となっていることが分かった。a-SiC:Hの高品質膜作製にはこの二量体の生成自体を抑制する、即ち単寿命反応種の生成抑制が必須で有り、膜作製時の基板温度増加、更にはSiHxとCH3の衝突確率低減のため水素希釈常態化での製膜などを行う事が低欠陥密度化実現にむけて重要な製膜条件であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では薄膜シリコン材料の一種であるナノ結晶シリコンを用いた太陽電池における、界面制御層作製のために、2カ年での計画を立て一年目である本年は、高品質ワイドギャップ薄膜シリコン系材料の開発に注力した。 実際にプラズマ気相診断と実際の膜に対する気相物性評価などを通じ、計画通りに高品質膜作製の道筋を示したものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初計画の通り、実デバイスを用いた評価を行う。特にnipやpinの構造の違い如何に関わらず、薄膜シリコン系太陽電池はp層側から光を入射する。従って太陽電池デバイスでの外部量子効率測定を用いた際、界面の性能は太陽光をより多く吸収し光電変換性能に直結する短波長側に多く現れる。従って、界面性能評価は一番基礎となるJ-V特性評価と共に量子効率測定を評価基準とし、前年までに開発した高品質膜をデバイスに適用する。又デバイスの高性能化には光活性層であるナノ結晶シリコンの光学ギャップに対する高品質膜界面制御層の性能の考慮並びに膜厚制御が必須となる。前年の知見を元に更なる高品質化への挑戦と共に、最終年度である本年度にてナノ結晶シリコン太陽電池での高性能化への道筋を付ける予定である。
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