研究課題/領域番号 |
26870348
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
LEI XIAOWEN 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50726148)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | carbon nanotube / Stone-Wales defect / dislocation dipole / lattice defect |
研究実績の概要 |
本研究は、二次元材料としてのカーボンナノチューブ(Carbon nanotube; CNT)の円筒形状に特有の周方向の周期性と曲率に着目し、グラフェンシート(Graphene Sheet; GS)との比較により、曲率を有する低次元材料の格子欠陥理論の構築に向けた基礎的研究を行う。具体的には、Stone-Wales(SW) 欠陥から分解してできるPentagon-Heptagon(5-7) 欠陥対の解析を通じて、欠陥構造の安定性、運動に対するエネルギー障壁を調べ、原子モデルを用いた基礎的解析とシェル理論に基づく連続体モデルを用いて、曲面上の格子欠陥論を構築し、材料創成の新プロセスや新機能発現に結びつく基礎的知見を得ることを目的とする。 平成26年度は、CNTの展開平面であるGSを用いて、CNT の欠陥の基礎的な知見を得た。具体的には、二次元格子欠陥古典弾性論に基づく格子欠陥理論による基礎的な検討を行った。その中で、5-7欠陥対を転位対(dislocation dipole)とみなして、連続体力学モデルを構築し、格子欠陥に働く力、安定性につい論じた。さらに、外力が作用する場合に、構造変化のための限界値の定量的な評価を行い、局所安定点の数の変化などを考察した。さらに、相対変位と相互作用力の関係方程式を元に、Zigzag型のCNTのせん断力が作用下における原子の相対変位を解析し、構造とエネルギー障壁の定量的な評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年11月の第一子出産の前後約三ケ月休暇をとり、文献読解などの時間に充当したため、当初の計画と一部順序を変更したものの、外力が作用するCNTの格子欠陥の安定性について、新規な研究成果が得られ、3件の学会発表が公表するなど研究はおおむね順調に進展している。上記の休暇に伴い研究期間の延長を申し出て、許可されており、研究計画の一部順序変更分についても速やかに実施できる準備が整っている。
|
今後の研究の推進方策 |
【平成27年度】 まず平成26年度に実施した理論解析による検討により得られた知見を、二次元弾性体の転位論に基づく連続体モデルおよび原子モデルの解析結果と比較する。次は元の予定でGS(“曲率のない”CNT展開面)の結果をふまえて、“曲率を有する”CNT上の解析を行う。 【平成28年度】 まずはさまざまなカイラリティのCNTに対して、転位にはたらく力(Peach-Koehler力)を自由行程上の運動座標の関数として評価し、平成26年度と平成27年度に実施したGSの解析と比較し、曲率の有無による結果の違いを考察する。次はナノコーンは回位(disclination)に起因する低次元材料の面外変形構造とみなすことができて、層間にファンデルワールス力を考えた多層CNTモデルを作成する。CNTの格子欠陥挙動の曲率依存性の結果および異なる層の格子欠陥同士の相互作用について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
出産に伴う休暇と育児のスケジューリングから、研究計画の一部順序変更を行い、本年度は文献の読解と理論解析を中心に研究を実施し、当初本年度導入予定の計算サーバーの支出と外国出張旅費の支出については次年度以後に順延している。(期間延長手続を行い、許可されている)
|
次年度使用額の使用計画 |
計算サーバーは、カーボンナノチューブおよびグラフェンシートの原子レベルシミュレーションに用いる。また、大容量ストレージはさまざまなカイラリティ―に対する格子欠陥運動のデータを保存し、解析するために導入する。H27年度、H28年度、それぞれの研究成果は、日本機械学会計算力学講演会、日本機械年次大会にて発表する計画である。また、H27年度は、Modelling and Simulation Meet Innovation in Ceramics Technology (CERMODEL2015)および9th European Solid Mechanics Conference (ESMC2015) 、H28年度は、The 24th International Congress of Theoretical and Applied Mechanics(ICTAM2016)での研究発表を予定している。
|