研究課題/領域番号 |
26870349
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東 園子 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (40581301)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポピュラーカルチャー / ジェンダー / 男性性 / 東アジア |
研究実績の概要 |
本研究は、日本のみならず東アジア圏に愛好者が存在する少女マンガ・男性アイドル・宝塚歌劇という日本の女性向けポピュラーカルチャーで共通して示される男性像の特徴と、それが愛好される社会的背景を受容調査によって明らかにすることで、現代に適合した新たな男性像を提示することを目的とする。昨今の社会状況においては、男性の間でも非正規雇用者が増加するなど、男性が従来理想とされた“一家の大黒柱”という男性性(masculinity)を必ずしも実現できるわけではない。それに伴うジェンダー・アイデンティティをめぐる男性の不安は女性への暴力などに向かうこともある。女性を抑圧せず男性にとっても魅力的な理想的男性像の構築が社会的に必要だと考えられるため、日本の女性向けポピュラーカルチャーが示す男性像から、新たな男性像を探求する。 本年度は、主な関連文献を収集・整理するとともに、以前に台湾で行った予備的なインタビュー調査の分析を進めた。その成果の一部は、第87回日本社会学会大会(於:神戸大学)で、「台湾における日本のポピュラーカルチャーへの関心の形成過程――宝塚歌劇の観客を事例にして」という題目で報告を行った。この報告では、台湾での宝塚歌劇公演の観客が宝塚歌劇に関心を持った背景には、日本と台湾の情報的近接性と物理的近接性が関わっていることを指摘した。これらの近接性は日本のポピュラーカルチャーが提示する男性像の受容にも影響を及ぼしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、2~3月に海外での調査を行う計画があったが、関連文献の整理と予備調査の分析に予想以上に時間がかかったため、新たな調査に着手することはできなかった。しかしながら、この作業をしっかりと行うことで今後の調査に向けて重要な知見が得られたため、必要な行程だったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度得られた知見を元に、本格的に海外調査を行う計画である。8月に本研究申請時には発表されていなかった第2回宝塚歌劇台湾公演が行われるので、研究計画を変更し、公演期間中とその前後に現地での参与観察とインタビュー調査を行う予定である。申請時から計画していたインタビュー調査とあわせて参与観察を行うため、この変更は当初の研究計画に大きな支障をきたすことはない。第1回台湾公演時にも参与観察を行っているため、その結果と比較することで、本研究にとってより有益な知見が得られると考える。そのため、次年度は主に8月に予定している調査の準備と結果の分析に注力しつつ、他の調査や関連文献の収集・整理を随時行う。研究成果報告については、7月にシンポジウムに登壇し、本研究の成果も交えながら研究報告を行う予定がある他、学会等で積極的に研究成果を発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外での調査を実施できなかったため、翌年度への繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、台湾での調査を行う計画であるため、その調査に関する費用に予算を中心的に使用する予定である。具体的には、台湾への旅費・滞在費、通訳・文字起こしの謝金などに研究費を用いる。また、引き続き関連文献の収集、学会への参加費用等にも予算を充てる予定である。
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