本研究は,希土類添加半導体とフォトニック結晶の融合により,フォトニック結晶によって制御された光子モード下における希土類イオンの発光特性評価およびそのデバイス応用に向けた検討を目的とする.フォトニック結晶と組み合わせる発光体として量子井戸や量子ドットを用いた報告は既に多数存在するが,希土類イオンを用いた報告は無く,未知の領域と言える.本研究ではまずフォトニック結晶による光子モード制御下における希土類イオンの光学特性を明らかにし,得られた知見を元に発光デバイスへの展開,具体的には発光ダイオードの輝度増大や,希土類イオンを利得媒質とする,発光波長の温度依存性の極めて小さいレーザの実現を目指す. 今年度は,これまで試料作成に用いてきたプロセスのうち,特にGaAsのドライエッチング周辺の工程の見直しを行った.本研究ではこれまで,2次元フォトニック結晶スラブを形成するための犠牲層としてIn0.47Ga0.53Pを用いて,HIガスを主成分とするエッチャントガスによりICP-RIEを行ってきた.しかし,装置の都合によりHIガスによるエッチングが行えなくなったため,GaAsのドライエッチングにおいて最も広く用いられているCl2ガスを主成分とするエッチャントガスによるプロセスに切り替える必要があった.この変更により,InGaP犠牲層のHClによる選択ウェットエッチングが全く進まなくなるという致命的な不具合が発生した.ドライエッチング中の反応生成物がウェットエッチングを阻害していると考えられ,GaAsを侵さないエッチャントでの除去は不可能であった.そこで,犠牲層をAl0.6Ga0.4Asに変更し,HFによるエッチングを行うプロセスに変更し,フォトニック結晶によるErイオンの発光増強効果を示す試料が作製できた.
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