研究課題
光合成生物の生体内で起こる光化学系I(PSI)の[還元→光吸収→電荷分離→内部電子伝達→酸化]反応のうち、光吸収とPSI内部の電子伝達反応については、PSIの結晶構造情報から詳細に明らかとなっている。しかしながら、PSIを酸化/還元する構造基盤は解明されていない。PSIはプラストシアニン(Pc)、またはシトクロムc6によって還元され、Fdによって酸化される。これらは全て10kDa程度の水溶性電子伝達蛋白質であり、PSIと電子の受け渡しを行う際、一時的に弱い相互作用で電子伝達複合体を形成する。この複合体形成に誘導されてPSIと電子伝達蛋白質の双方が構造変化を起こし、電子伝達に最適な反応場が整えられる。その上で、双方の酸化還元反応中心が適切な距離と配向をもって配置されると考えられる。私はこれまでに、PSI酸化メカニズムを構造的に理解することを目指してPSIとFdの複合体結晶構造解析を行った。そして、Fdの結合様式や酸化還元反応中心周辺環境からPSI酸化の構造基盤を解き明かした。次にPSI還元メカニズムを理解するためにPSIとPSIを還元する蛋白質の複合体結晶構造解析を進めた。上述の通り、PSIを還元する蛋白質は二種類存在しているが、反応中心金属が銅であり、金属置換再構成の実績があるPcをターゲットとした。これまでに報告されている高分解能PSIは好熱性シアノバクテリアのものであるが、この種はPcを利用しない。そのためPSIは常温性シアノバクテリアのSynechocystisを利用した。Pc結合前後の構造を比較する必要があるため、まずSynechocystisのPSI結晶構造解析を行った。精製したPSI三量体から良質の結晶を得ることに成功し、X線回折実験の後、分子置換により位相を決定して立体構造を得た。現在PSI-Pc複合体結晶化のスクリーニングを進めている。
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