研究課題
本研究の目的は、バイオマス資源を生物化学的変換により有機性資源に高効率に変換する技術の進展である。バイオマス資源としてはリグノセルロース系バイオマスである稲わらを使用した。稲わらは、主にセルロース・ヘミセルロース・リグニンが結合した構造を取っており、これら3成分を完全に利用する事が望ましい。そこで、セルロース・ヘミセルロースをバイオガスとして利用し、続いてリグニンを高度膜分離により回収するプロセスを構築した。稲わらは、前処理としてナノメックリアクターにより、1.9 MJ/kg-biomassの低消費エネルギーにて微粉砕を行った。微粉砕は、セルロース・ヘミセルロースの分解を促進する事が可能である事が明らかとなった。微粉砕した稲わらはメタン発酵槽に投入し、稲わらの分解をさらに効率化するために、発酵槽中に微生物付着担体として炭素繊維を設置した(固定床式メタン発酵と呼ぶ)。比較対象として、微粉砕を行っていない稲わらを投入した固定床式メタン発酵と比較すると、メタン生成量の増加が観察され、微粉砕により稲わらからのメタン生成を効率化できる事が明らかとなった。さらに、メタン増加分のエネルギーは3.5MJ/kg-biomassに達しており、投入した微粉砕エネルギー以上のメタンをエネルギーとして回収できる事が明らかとなった。微粉砕した稲わらの固定床式メタン発酵液残渣は室温にて30日間放置したところ、上清の液が褐色に変色しており、これをナノフィルトーレーション膜により黒色沈殿物を膜上に特異的に回収した。黒色沈殿物は50%以上のリグニンを含有しており、稲わら中のリグニンの約25%を回収する事に成功した。さらに2次元核磁気共鳴法によりリグニンの成分を測定したところ、リグニン芳香環であった。今後は、得られたリグニンの分子量を調べ、低分子画分を微生物変換により利用する事を予定している。
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Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 120 ページ: 96-100
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Biotechnology for Biofuels
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http://www2.kobe-u.ac.jp/~akondo/sasaki.html