研究課題
ファンコニ貧血原因遺伝子産物の一つであるFANCD2は、DNA鎖間架橋損傷の修復および細胞応答に機能する重要な因子である。申請者は前年度までにFANCD2が、TNF-αおよびシクロヘキシミド(TNF/CHX)処理によって誘導されるDNA損傷非依存的な細胞死誘導を負に制御する可能性を見出した。平成26年度は、新たに見出した現象の普遍性の検証を中心に解析を行った。まず、U2OS細胞を用いて野生型FANCD2(wtD2)を過剰発現させた細胞株を樹立し、TNF/CHX処理による細胞死誘導に対する感受性を調べた。その結果、親株となるU2OS細胞に比べ、wtD2過剰発現細胞が有意に細胞死誘導に対して抵抗性を示すようになった。さらに、RNAiにより内在性のFANCD2の発現抑制を行ったところ、TNF/CHX処理による細胞死誘導に対して有意に感受性を示すようになった。これらの結果は、FANCD2欠損細胞を用いて行った予備実験の結果と一致し、申請者によって見出された現象の普遍性が示された。FANCD2はDNA損傷応答においてFANCIとヘテロ二量体を形成して機能することが知られている。現在FANCI欠損細胞でも同様の結果が得られるか検証中である。また、FANCD2の関与する細胞死制御機構に関わる新規相互作用因子の探索に関しても、FANCD2を含む複合体の分離・精製、及びその構成成分の質量分析による網羅的解析を行った。その結果、複数の新たな候補因子が単離され、その一つの因子に関しては免疫沈降解析によってもFANCD2と共沈降することを確認した。現在これらの候補因子に関してさらなる解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
申請者が見出した細胞死制御におけるFANCD2の関わる新たな制御機構に関して、複数の細胞でも同様の現象が見られたことにより、その普遍性検証が概ね完了した。さらに、新規相互作用因子の単離・解析も進行中である。
一般的にDNA損傷応答に関与する因子の機能解析は核内に限られるが、申請者が見出した現象は細胞質中のシグナル伝達などに関与する可能性がある。そのため今後は研究計画に記載されている通り、細胞質領域におけるFANCD2の機能解析を進める予定である。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
FEBS Letter
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www.research.kobe-u.ac.jp/brce-sugasawa/index.html