本研究のテーマに基づき、本年度はまず、 1.平成28年度は9月にフランスで調査を行った。おもな訪問先は国立図書館、装飾美術館付属図書館、ガリエラ美術館で、ポワレが1911年に開校した少女のためのデザイン学校、エコール・マルティーヌと、その生徒たちのデザインを取り込んだ製品を制作・販売したインテリアショップ、アトリエ・マルティーヌに関する資料収集を行い、貴重な写真資料ならびに関連記事などを入手した。 2.これまでのポワレ研究の成果の一部を論文「アール・デコ展におけるモードとインテリア」にまとめ、「モードとインテリアの20世紀展」(平成28年9月~11月に開催、於:汐留電工ミュージアム)のカタログで発表した。その中で、衣服にとどまらず生活に関わるすべてのものを洗練された趣味で彩ろうとしたポワレの試みが、当時、ヨーロッパで多くの芸術家たちが影響を受けていたアーツ・アンド・クラフツ運動の思想に基づいた同時代的なものであることを指摘した上で、パリ・オートクチュールの黄金期を支えていた彼が異分野に進出したからこそ、20世紀初頭のフランスで他国に先駆け今日でいうところのライフスタイルブランドのはじまりが築かれたと結論づけた。 3.これまでの調査で得た資料を活用し、平成28年7月にはポワレと同時期に同じく本来の領域を乗り越え、モードの仕事を展開した漆作家ジャン・デュナンと画家の藤田嗣治についてそれぞれ発表を行い、20世紀初頭のパリ・モードの重層性と多様性を浮かび上がらせた。
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