研究課題/領域番号 |
26870361
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小野 くみ子 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (30467667)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 水中運動 / 心腎連関 |
研究実績の概要 |
本研究は、糖尿病患者に対して水中運動プログラムを行うことが糖尿病合併症と深く関連する心腎連関にどのような影響を与えるかについて検討することを目的としている。 平成28年度の研究実績として、まず、4km/hまでの漸増負荷水中歩行運動が2型糖尿病患者の心拍数、血圧および尿中アルブミン排泄量に及ぼす影響を明らかにした。対象は顕性アルブミン尿を認めない2型糖尿病患者6名であった。1~4km/hの水中および陸上漸増負荷トレッドミル歩行を28分間実施し、心拍数、血圧、運動前後の尿中アルブミン排泄量(UAE)を測定した。心拍数は陸上と比較して水中で低値を示したが有意な差ではなかった。収縮期血圧は、漸増負荷に伴い有意に高値を示したが、条件間に有意差を認めなかった。UAEは、運動前後ならびに条件間に有意差を認めなかった。陸上における運動と同様に、2型糖尿病患者における4km/hまでの水中トレッドミル歩行は循環指標および腎機能の観点から安全に遂行できる運動であることが明らかになった。 次に、水中トレッドミル歩行が2型糖尿病患者の尿中電解質に及ぼす影響について明らかにした。対象は2型糖尿病患者8名であった。1~4km/hの水中および陸上漸増負荷トレッドミル歩行を28分間実施し、心拍数、血圧、運動前後の尿中電解質排泄量(Na, K, K/Cr)および尿量を測定した。心拍数、収縮期血圧は段階毎に有意に変化したが、2条件間に有意差は認められなかった。運動後の尿中Na, K排泄量および尿量は陸上と比較して水中条件で有意に高値を示した。条件間の尿中K/Cr排泄量に有意差はなかった。合併症として腎症に至る糖尿病患者にとって、水中運動は有益になりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
約11ヶ月の育児休業のち検査測定手技再獲得に時間を要したこと、研究協力者であった大学院生がすでに修了していたことから協力者を新たに募って研究をスタートさせたこと、新たな対象者リクルートに難渋したこと、これら3点の理由で研究の進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、研究課題2として掲げていた「水中運動プログラムの継続が糖尿病患者の血圧を安定させ、血管内皮機能および腎症進展抑制可能か?」について継続して遂行して行く予定としている。また、本年度(平成29年度)が補助事業最終年度であったが、平成29年7月初旬より平成30年3月まで産前産後の休暇ならびに育児休業取得に伴う約9ヶ月間の研究遂行困難な状態であり、本年度の事業終了は困難と考えられる。本件に関しては平成30年度末までの事業とした補助事業期間の延長申請を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、当初平成26年度~28年度の3年間で完遂する予定の事業であったが、平成27年度に約11ヶ月間の産前産後休暇ならびに育児休業に伴う事業の遂行困難があり、平成27年度分の予算を満額使用することができず、平成28年度に持ち越しする運びとなっていた。一方で、終了予定年度であった今年度に向け、当初使用予定の予算をすべて支出請求しており、次年度使用額が生じた。また、平成27年度に研究遂行困難期間があり、本年度当初に測定手技獲得のための時間を要し、その間実質の研究が遂行困難であったことも合わせ、さらに次年度使用額が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成29年度)は、さらに研究を進めていくため、消耗品である呼気ガス分析装置の校正ガス、心電図導出電極、リード線、アルコール綿、防水用テープ、動脈硬化度記録用紙、血糖測定用ディスポーザル針、センサーチップ、等を購入し、尿中データの解析外注委託費としても使用していく予定である。また、学会発表にかかる学会参加費および渡航費としても使用していく予定である。
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