昨年度までに一つの株からアミノ酸であるリジンと有機酸であるコハク酸を酸素の有無でそれぞれ高生産する株とシステムを構築した。 昨年度はまた、物質生産において問題となる発酵阻害物質のひとつであるフルフラールに対するコリネ型細菌の挙動を調べた。発酵阻害物質はバイオマスから糖液を調製する段階で生じる化学物質群であり、微生物の増殖と発酵を阻害することが知られており、フルフラールは代表的な発酵阻害物質である。コリネ型細菌はフルフラールの存在下で増殖阻害を示すが、時間が経過するとフルフラールをフルフリルアルコールと2-フランカルボン酸に分解することが分かった。本年度はこのうち、フルフラールをフルフリルアルコールに分解する遺伝子の同定を目指した。 候補遺伝子を4つ抽出し、それぞれ欠損株を作製してフルフラールの分解とフルフリルアルコールと2-フランカルボン酸の生成挙動を調べた結果、Cgl0331(FudCと命名)遺伝子を欠損させると、フルフラール分解速度が顕著に減少し、フルフリルアルコールの生成速度も著しく減少することが分かった。大腸菌においてCgl0331の精製タンパク質を調整し、試験管内での実験を行ったところ、Cgl0331は補因子としてNADPHを利用してフルフラールをフルフリルアルコールに分解することが分かった。
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