研究課題
前年度はヒト食道正常扁平上皮細胞株とマクロファージ様細胞株を用いた間接共培養系を確立した。この系の解析によって間接共培養後のヒト食道正常扁平上皮細胞株ではp38 MAPキナーゼの活性化を介して増殖能・運動能が亢進している事を見出した。平成27年度はヒト食道正常扁平上皮細胞株とマクロファージ様細胞株との間の異種細胞間相互作用を媒介する分子を見出す目的で、それぞれの単独培養あるいは間接共培養の培養上清を回収し、western blot-based cytokine arrayに供した。その結果、間接共培養上清では単独培養上清と比べてインターロイキン6(IL-6)のシグナルが増強していた。同じ培養上清を用いてIL-6のELISAを行うと、確かに間接共培養上清中ではIL-6の分泌が亢進している事が分かった。次に、IL-6の主な産生源を検討するため、ヒト食道正常扁平上皮細胞株とマクロファージ様細胞株それぞれの単独培養と間接共培養後のmRNAを抽出し、定量的RT-PCRを施行したところ、ヒト食道正常扁平上皮細胞株において間接共培養後にIL-6 mRNAの発現が著明に増加しており、間接共培養上清中のIL-6の主な産生源はヒト食道正常扁平上皮細胞株である事が分かった。さらには、間接共培養系にIL-6に対する中和抗体を添加すると、間接共培養によるヒト食道正常扁平上皮細胞株の増殖能亢進は有意に抑制された。最後に、食道上皮内腫瘍症例を用いてIL-6の免疫組織化学を施行したところ、前年度に明らかにしたリン酸化p38 MAPキナーゼに加えてIL-6も腫瘍細胞の一部に陽性所見が認められた。
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Pathology International
巻: 66 ページ: 83-93
DOI: 10.1111/pin.12381
別冊Bio Clinica 慢性炎症とがん
巻: 5 ページ: 77-81