平成28年度の補助事業期間の延長が承認されたため、平成29年度には追加の実験を行った。 本研究の第一の目的は、高齢ドライバーの走行中の速度補償について明らかにすることであった。高齢ドライバーと非高齢ドライバーの一時停止交差点における運転行動を比較して、加齢に伴う速度調節の違いを検討するために、今年度は60~70代の高齢ドライバーを対象として、自動車教習所内のコースを走行する実車走行実験を実施した。一時停止交差点における右折行動を、車載したドライブレコーダ及び路上に設置した外部カメラにて撮影を行い測定した。測定指標は、一時停止線付近の速度、位置等であった。練習走行を実施して車両とコースに慣れた後、通常条件として普段通りの走行に加えて、走行速度を変えた安全条件及び急ぎ条件の走行を求めた。実験には、教習車(AT車)2台を使用し、教習所指導員が同乗し、一時停止線の前で停止の指示を与えると共に、参加者の安全を確保した。その他、基本属性、運転習慣、運転に関する主観指標を得ると共に、Mini Mental State Examination等、運動機能の測定として足の踏み替え速度、足の底屈背屈筋力を測定した。実験は1日1回4~6名同時に実施し、休憩時間を含めて約2時間であった。分析の結果、40~50代の非高齢ドライバーと60-70代の高齢ドライバーの一時停止行動では顕著な違いは見られなかった。しかしながら、指示の違いに応じて、一時停止行動には違いが見られ、日常において生じる高齢ドライバーの特性が示唆された。また、運動機能と停止行動の関連が示唆された。 また本研究の第二の目的は、高齢者の運転中断を含む情動抑制に関する意思決定行動を明らかにすることでった。昨年度までに実施した大規模インターネット調査の研究成果について、随時研究会や学会等で発表を行った。
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