研究課題
前年度までの結果から、ヒトの胃、大腸がんの細胞株の約50%において、naive状態にあるヒトの多能性幹細胞において高発現しているヒト内在性レトロウイルスHERV-Hの関連遺伝子が発現していることがわかった。ヒトの多能性幹細胞においては、これらの遺伝子が発現している細胞群は数%程度であるとされている。そこで、ヒトの胃、大腸がん細胞においては、どの程度の割合でHERV-H関連遺伝子の発現細胞が存在するのかを調べるために、前年度に作成したHERV-H関連遺伝子XのLTR7領域の下流にGFPをつないだレポーターコンストラクトを導入した。しかしながら、Xが発現している細胞、発現していない細胞両方でGFP陽性細胞が観察された。作成したコンストラクトは正常細胞のゲノムDNAからクローニングしたものであったため、がん細胞のゲノムからも同様にコンストラクトを作成して比較し、この遺伝子Xの発現制御機構の一端を明らかにしようと試みた。また、HERVHの活性化状態の網羅的かつ定量的な評価系の確立の導入として、様々ながん細胞のみならず、がん細胞に初期化因子を導入することで得られる人工がん幹細胞や、正常・疾患iPS細胞、それらのiPS細胞から分化した細胞においてHERVHの発現を半定量PCRで調べた。その結果、いくつかの細胞群において、HERVHの発現が確認できた。今後RNAシークエンスや各細胞の機能との関係を調べることによって、病態とHERVとの関連の解明が期待される。
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Cell Stem Cell
巻: 19 ページ: 341-54
10.1016/j.stem.2016.06.019