研究課題/領域番号 |
26870369
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
渡邊 三津子 奈良女子大学, 共生科学研究センター, 研究支援推進員 (10423245)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カザフスタン / 経済のグローバル化 / 乾燥地農業 / 施設栽培 / 青果物流通 |
研究実績の概要 |
本研究は、経済体制移行後の中央アジア・カザフスタンにおいて、経済のグローバル化の進展とともに変容する地域の市場や農業に焦点を当てる。特に、人びとの生活に深く関わる市場(バザール)と農業生産者を対象とし、近年の青果物輸入の増加がもたらした変容の実態や、それらが地域農業や土地利用に与えた影響について、統計・衛星データの分析や、インタビュー調査を通じて明らかにすることを目的としている。そのために、本年度は以下の項目を実施した。 1. 統計データ解析: カザフスタン共和国統計局、アルマトゥ州統計局、FAO(国際連合食糧農業機関)がオンラインで無料公開している統計情報の取得・分析を行い、マクロな動きを把握した。 2. 衛星データ解析: 現地調査に先立ち、USGS(米国地質調査所)から無償提供されている衛星データを取得・分析し、土地利用変化を時系列で把握した。 3. 現地調査:都市近郊及び地方農村の市場内に青果店を構える商人とその取引先の農業生産者を訪問し、現在の輸入農作物の仕入れ・販売状況や、農作物の生産・販売状況などに関するインタビュー調査を実施した。 4. 成果公開: 研究成果の一部については、日本沙漠学会第25回学術大会、日本中央アジア学会公開パネル「変容する境域とモビリティ:中央アジア乾燥地の人・モノ・社会」で発表したほか、日本沙漠学会第26回学術大会でも発表を予定している。また、複数の若手研究者とともにJCAS次世代ワークショップ「ユーラシアにおける境界と環境・社会」を共催するなど、成果の発信に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統計データ解析、衛星データ解析、現地調査、学会発表等による成果公開に関して、十分に目的を達成することができた。具体的な達成状況については以下の通りである。 統計データ解析については、調査前に分析を実施し、中国産、ウズベキスタン産の青果物輸入量のマクロな動きを把握することができた。また、その結果は現地調査においても有用であった。 衛星データ解析については、オンラインで無償提供されている衛星データを利用した広域解析を中心に行い、対象地域におけるソ連時代から現在までの土地被覆・土地利用状況の変化について把握することができた。その結果は、現地において土地利用状況を把握する上で大いに役立った。 現地調査に関しては、都市近郊と地方農村の市場内に青果店を構える商人とその取引先の農業生産者を訪問し、現在の輸入農作物の仕入れ・販売状況や農作物の生産・販売状況などに関するインタビュー調査を実施した。結果、アルマトゥを中心とする輸入・地場産青果物の流れの実態、取扱い青果物およびその産地の時期による変化や、輸入青果物増加後の産地シフト、市場変化を受けて地元農業生産者が施設栽培導入に踏み切る経緯など経済のグローバル化の進展にともなう市場と地域農業の変容の実態が明らかになった。また、アルマトゥ州の都市部・農村部の市場と地域農業の変容を理解するためには、当初の研究計画に含まれていた中国産に加えて、ウズベキスタン産の青果物の流通動向が重要な鍵となることなど、次年度につながる新たな課題を含めた知見を得ることができた。 本年度の結果をふまえ、次年度は対象地域を拡大し、都市・農村の市場と地域農業の関係に関する地域間比較を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究をふまえた今後の推進方策は以下の通りである。 まず、本年度の結果を受けて、研究対象とする市場や周辺地域の範囲を拡大することとする。既述のとおり、アルマトゥ市内の市場および近郊農業の変容について十分に理解するためには、当初の研究計画に含まれていた中国産だけでなく、ウズベキスタン産の青果物の流通量との関係性の中での理解が重要であると判断するに至った。このため、当初の対象地域(アルマトゥ州)に加え、ウズベキスタンに近接する南カザフスタン州を対象として加えることとする。 調査地域の拡大を受け、本年度に引き続きオンラインで無償提供されているデータを中心とした広域解析を実施するとともに、解析対象地域を絞って高解像度衛星データを購入・分析を行う。 成果公開に関しては、日本沙漠学会第26回学術大会等の学術大会での報告に加え、日本沙漠学会沙漠誌分科会研究会企画と、研究会をふまえた学術雑誌における小特集への論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
既述のように、研究を進める過程において、アルマトゥ市内の市場および近郊農業の変容について十分に理解するためには、当初の研究計画に含まれていた中国産だけでなく、ウズベキスタン産の青果物の流通量との関係性の中での理解が重要であることが明らかとなった。このため、当初の対象地域(アルマトゥ州)に加え、ウズベキスタンに近接する南カザフスタン州シムケント及び周辺地域を分析の対象として加えることとした。 対象地域を拡大するにあたり、高解像度データを用いた詳細な分析に入る前に、広域的な分析と現地協力者からの情報収集が必要と判断し、H26年度はオンラインで無償提供されている衛星データを用いた広域的な解析を中心に行った。このため、当初予定していた高解像度衛星データの購入および解析作業をH27年度に実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
調査対象地域の拡大を受け、本年度に実施した広域解析と現地調査結果を精査して地域的な優先順位を判断し、次年度の早い時期に高解像度衛星データを購入・分析を行う。 なお、当初計画の使途及び予定額に変更はない。
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