研究課題
本研究は自然免疫系リンパ球の一つであるnatural helper(NH)細胞に着目し、消化器系のアレルギー疾患として知られている好酸球性食道炎の病態形成におけるNH細胞との関連を明確にし、治療応用につなげることを目的とした研究である。NH細胞においてTh2系サイトカインを誘導するIL-33はIL-1ファミリーに属するサイトカインであり、アレルギー性炎症における中心的な調節性サイトカインと考えられている。平成28年度はIL-33全身投与における食道を含めた消化管への影響を解析するために、平成27年度と同様に野生型マウスに対してrecombinant IL-33蛋白の腹腔内投与を行い、実験的好酸球性食道炎モデルマウスを作成し、実験を継続した。また同モデルの食道粘膜局所におけるTh2系サイトカインの動向をDNAマイクロアレイを用いて確認した。その結果、アレルギー疾患の病態形成に重要な役割を示す遺伝子の増幅を認めた。これらの結果からIL-33は好酸球性食道炎の病態形成において重要な役割を担っていることが示唆され、同サイトカインの全身投与による食道炎モデルはこれまで既知の好酸球性食道炎モデルと同様に病態の解明に寄与するものと思われた。これらの結果からIL-33は好酸球性食道炎の病態形成において重要な役割を担っていることが確認できた。
4: 遅れている
研究実績の概要で述べたように、これまでの研究において、野生型マウスにIL-33蛋白を腹腔内投与することにより、著明な脾腫、末梢血における好酸球上昇などの全身における反応のみならず、食道粘膜局所に著明な好酸球の誘導を認め、さらにアレルギー疾患の病態形成に重要な関連を示す遺伝子の増幅を認めたことより、IL-33は好酸球性食道炎の病態形成において重要な役割を担っていることを明らかにした。これまでの研究の進行状況は順調であり、実験結果の研究前に立てた仮説を検証するのに十分なものであった。しかしながら、IL-33刺激による食道粘膜におけるサイトカイン、ケモカインの発現変化を確認するex vivoでの実験計画において、実験系の構築において時間を要し、さらに仮説と異なる新たな知見を得たため、新たな実験を組み入れる必要性が生じ、達成度は遅れていると判断した。
平成28年度の研究成果を基に平成29年度においても現在進行中の実験を継続していく。内容は、野生型マウス(BALB/c)を用いて、NH細胞と食道の上皮細胞、免疫担当細胞のクロストークを解明していく。具体的には、前述通りIL-33刺激による食道粘膜局所におけるサイトカイン、ケモカインの発現変化を主にex vivoの手法を用いて以下の手法で確認していく。I. IL-33刺激による食道粘膜におけるサイトカイン、ケモカインの発現変化野生型マウスの食道から食道上皮細胞、食道粘膜固有層リンパ球、NH細胞を分離、共培養する。それらの細胞をrecombinant IL-33で刺激し、Th2系サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13、IL-15)、ケモカイン(Eotaxin-3)、IL-33の受容体であるST2(IL-33Rα鎖)の発現量を定量的RT-PCR法、その培養上澄中のサイトカインをELISAで測定する。これらをNH細胞との共培養の有無により比較検討する。また、同様に上記サイトカインや病原体成分などで培養細胞を刺激しIL-33の発現を定量的RT-PCR法、ELISAで検討する。以上の研究により平成28年度以上の達成度が得られると考えている。
平成28年度については、配布予定の直接経費における1496736円のうち695949円が未使用となった。この原因に関しては、①当研究室で既に所有している物品を共有したため、分子生物学的試薬やフローサイトメトリーなどの物品費の購入が少なかった、②予定していたマウスの購入が年度内に間に合わなかった事などがあげられる。
平成29年度は695949円の研究費で遂行していく。具体的にはマウス(NH細胞欠損マウス)の購入、フローサイトメトリーの抗体などの分子生物学的試薬や、成果発表予定の国際学会(UEGW2017)の参加費用に充てる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Dig Endosc.
巻: 29(1) ページ: 49-56
10.1111/den.12706.
Digestion.
巻: 93(1) ページ: 7-12
10.1159/000441668.