研究課題/領域番号 |
26870382
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
舩木 修平 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (00602880)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RE123の低温成膜 / RE123の高品質化 / RE123の液相成長 |
研究実績の概要 |
これまで,KOHを用いた溶融水酸化物法における作製雰囲気及び温度などの様々な条件を変化させRE123膜を作製することで,窒素気流中(0.1%酸素下)においてY123相を成長させることに成功し,その作製温度を500˚Cまで低温化させられることを明らかにしてきた.また,REのイオン半径が大きくなるほど,RE123相が生成されやすくなることを明らかにし,Ndを用いた場合は1気圧の大気下においても425˚Cの低温下までNd123相を作製することに成功してきた.しかしながら,基板に用いたNdGaO3はRE123に対して熱膨張係数が小さいために,降温過程でRE123膜にクラックが生じるという課題がった.本年度は,熱膨張係数の異なる様々な単結晶基板上にRE123およびRE124の成膜を試み,得られた試料の配向性,結晶表面,超伝導特性の評価を行った. これまで気相成長法などで実績があるSrTiO3基板は,高温のKOHに対する耐性が低く,550˚C以上では基板表面を覆うような膜状の試料を得ることができなかったが,525˚Cまでの成膜温度においてはRE123膜を得ることに成功した.また,同じく実績の高いLaAlO3基板は高温のKOHでも腐食されることはなかったが,RE123との界面エネルギーが大きく,結晶が成長しなかった.応用上最も有用とされるMgO基板はKOHに対する耐性がどの基板よりも低く,溶解してしまった.そこで,LaAlO3基板,MgO基板上にMOD法及びスパッタリング法によりRE123極薄膜を成膜し,それを種結晶としてKOHを用いた溶融水酸化物法による液相成長を試みた.結果として,LaAlO3基板,MgO基板上に溶融水酸化物法で高性能かつ低コストな膜を作製することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要でも述べたように,平成27年度以降に目標としていた「様々な単結晶基板を用いたRE123膜の作製」は滞りなく達成していると考えられる.また,種結晶を用いることで様々な基材上に製膜することが可能となったため,金属テープ上への成膜など,今後のさらなる飛躍が期待できる.さらに,熱処理によるRE124→RE123の相変態を利用することで,超伝導特性劣化の要因となる「RE/Ba置換」の少ないRE123膜を作製できることを明らかにしたことは,大きな成果であると考えられる.これは平成27年度以降に目標としていた「RE123膜中で磁束ピンニングセンターとなる,ナノサイズ不純物の形成」に対し,余剰なCuを不純物として活用できる点で,非常に興味深い結果である.
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今後の研究の推進方策 |
種結晶を成膜することで,様々な単結晶基板上に膜を作製することに成功したことから,それらの膜のクラックの有無を検証し,クラックがなければ電流をどれだけ流すことが可能か明らかにしたいと考えている.また,様々なREを用いたRE124→RE123相変態熱処理による高品質なRE123成膜を試み,溶融水酸化物法で直接RE123を低温成膜した際のRE/Ba置換の抑制を試みたい.さらに,相変態により余剰となるCuを膜内部に微細に分散させることで,磁束ピンニングセンターとなるナノサイズ不純物として活用できないか検証したいと考える. 最終的には,応用上もっとも重要とされる磁場中での超伝導特性を明らかにし,特性向上のための膜中における不純物の形成メカニズム,及び形状コントロールの方法について明らかにしたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
他の競争的資金の獲得により,消耗品として購入予定であった,単結晶基板,薬品の購入の必要がなくなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,消耗品のほか,成果発表旅費や論文投稿にかかわる英文校正や投稿費に使用したい.
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