研究課題
本研究では、ナトリウムイオン電池負極炭素にドープされたナトリウムの吸蔵状態や吸蔵サイトについて固体核磁気共鳴(NMR)を用いて明らかにし、充放電挙動や不可逆容量との関係を解明すること、および各種アルカリ金属が導入された炭素化合物の状態分析から炭素内のグラフェン層とアルカリ金属の相互作用を考察することを目的として実験を進めている。最終年度である平成28年度は、構造の異なる複数の難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)サンプルを作製し、各サンプルに電気化学的に導入されたナトリウムについて固体23Na NMRにより状態を調べた研究結果をまとめた。ナトリウムおよびリチウムのハードカーボン内での吸蔵モデル、リチウムでは容量(吸蔵量)の得られない1600℃以上の温度で焼成した炭素でもナトリウムでは高容量が得られる理由について説明できるクラスターモデルについて提案した論文を投稿し、アクセプト、出版された。また、ナトリウムがジグライム重水素化物と黒鉛層間に共挿入された三元系黒鉛層間化合物を溶液法にて作製した。このサンプルの23Naおよび2H固体NMR測定から、アルカリ金属イオンや有機分子の層内での構造および動的挙動を明らかにし、論文として報告した。ジグライム分子は233 K以下の低温では末端のメチル基のみが回転し、分子全体はrigidな状態でNaに配位しているが、室温では中心の酸素原子のみがナトリウムに配位し、分子炭素鎖が黒鉛の炭素面に沿って自由に回転していることがわかった。以上の研究から、ナトリウムイオン電池負極として利用可能な無定形炭素および黒鉛層間化合物におけるナトリウムの状態を明らかにするという目的を十分に達成することができた。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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