研究実績の概要 |
平成28年度には厚生労働省から統計法第33条に基づいて平成23年~平成26年の動態統計(死亡個票)を取得した。データは自殺死亡(ICD10コード X60-84;159,490件)およびその他の不慮の死亡(ICD10コード W00-X59, Y01-Y59;115,072件)について取得した。このデータを整理し、昨年度までに収集、解析を行っていたソーシャルメディア(Twitter)のデータとの連結を行った。 この連結したデータセットを用いて、ソーシャルメディアにおいて自殺関連情報が急激に広まっている際に、自殺を起こしやすい特性(脆弱性をもつ属性)を明らかにするための解析を実施した。具体的には、Case-only研究という研究デザインを用いて、Case-onlyオッズ比を算出した。このCase-onlyオッズ比は、交互作用の大きさを反映しているが、ある環境下(本研究では自殺関連情報の拡散)において、アウトカムを発症しやすい脆弱性をも反映しているものである。 この結果、年齢(40歳以下)・男性・無職・婚姻状態(離別)・都市部居住という属性は、ソーシャルメディアにおいて自殺関連情報が急激に広まっている際に、自殺への脆弱性が高いという結果を得た。このような脆弱性は、その他の不慮の死亡では認められなかったため、自殺死亡特異的な現象と判断した。 平成28年度までに上記結果および平成27年度に学会発表した結果について、論文投稿準備を行ったものの、査読有りの論文誌への論文受理には至っていない。ただし、2論文原稿をプレプリントとしてZenodo(CERNによるオープンな科学リポジトリ)への登録を完了している。補助事業期間終了後にはなるが、平成29年度中に査読有り論文誌に受理されるように作業を進める予定である。
|