研究実績の概要 |
【背景と目的】 Lactobacillus gasseriなどのヒト小腸優勢の乳酸桿菌は、様々な保健効果を示すプロバイオティック乳酸菌として食品利用が期待されているが、乳などの食品素材中で生育が緩慢であることからその利用が制限されている。そこで本研究では、ヒト小腸優勢乳酸桿菌の食品利用向上を目指し、その乳中生育因子を特定するととともに、乳中での良好な生育を実現するための新たな発酵手法の開発を行うことを平成26年度の目的とした。
【研究成果】 過去に研究代表者らは、Lb. gasseriの乳中生育因子が遊離アミノ酸、糖、脂質、核酸、ミネラルおよびビタミンのいずれでもなく、ペプチドであることを示唆する結果を報告している(Arakawa et al., Anim. Sci. J. 79, 2008)。平成26年度の本研究では、Lb. gasseriの乳中生育因子がタンパク質や遊離アミノ酸ではなく、ペプチドであることをまず明らかにした。次に、乳を食品利用可能なプロテアーゼ(特にペプシン)で処理し、乳中にペプチドを遊離させることによって、Lb. gasseriを利用した発酵乳製造が可能であることを見出した。さらに、本発酵法は、Lb. gasseriだけでなく、Lb. gasseriに近縁の腸管常在乳酸桿菌の良好な乳中生育をも可能にすることが明らかとなった。以上の成果は、乳中で生育が緩慢な多くのプロバイオティック乳酸桿菌の利用性を向上させるものとして産業への応用が期待される。
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