研究課題/領域番号 |
26870395
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
北川 知郎 広島大学, 大学病院, 病院助教 (70633709)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心外膜下脂肪 / 冠動脈硬化症 / 画像診断 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、心臓手術術前の心臓CT画像評価と術中に採取した心外膜下脂肪組織(EAT)の病理組織学的解析の対比検討を継続した。EATのマクロファージ浸潤および微小血管新生の発現レベルは、CT画像上の内臓脂肪量に関わりなく、冠動脈硬化症の進展期にあたる中等度石灰化および非石灰化プラークの形成と有意に関連していることを見出した。また、EATの炎症と微小血管新生は、対照組織としての胸骨下皮下脂肪のそれらより遥かに亢進しており、EATの炎症と微小血管新生同士が強い相関関係を呈していた。これらはEATの病的脂肪組織としての性状を示していると考えられ、EATの炎症、微小血管新生などの病理学的変性が相乗的に冠動脈硬化進展に寄与していることを示唆する新たな知見と考えられた。以上の結果は、American Heart Association Scientific Sessions 2015(Orlando)にて学会発表し、英文学術誌2誌に公表した(Atherosclerosis 2015, Data Brief 2015)。 当初、心臓画像診断として解析対象としていた心臓MRIについては、実施件数が少なく、異常信号を呈する症例も限られ、データ収集の効率性の観点から一旦研究項目から除外している。FDG-PETについては、心筋生理学的集積のため冠動脈信号の評価が困難であるという結論に達し、新たに冠動脈病変に特異性の高いトレーサー(フッ化ナトリウム)を用いた検討を開始した。EATの組織学的検討については、リアルタイムPCR法を用いた炎症性サイトカイン定量による踏み込んだ分子生物学的検討を始めている。当初解析項目であったIgG4、アディポネクチンについては、適切な抗体試薬の選定に難渋している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例数は当初予定していた数に到達していなかったが、CT画像および免疫染色の組織学的解析を用いた検討により、新たな知見の学術的確証が得られ、その情報発信(英論文発表)を行うことができた。一部予定していた研究項目を進められていないが、手法の変更や新規導入を通し、さらなる発展性を見込めると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
術前CT画像の解析および術中のEAT組織採取を継続し、症例を蓄積していく。冠動脈CTによる詳細なプラーク性状評価とEAT免疫染色(マクロファージ、微小血管新生、マクロファージフェノタイプM1, M2)所見との対比、リアルタイムPCR法を用いたEATにおける炎症性サイトカイン発現レベルとの対比に関する解析を進める。画像診断手法として、フッ化ナトリウムPETによる冠動脈イメージングの試みを進め、可能ならばEAT組織学的解析との関連性を探る。IgG4、アディポネクチンの適切な抗体試薬を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベース保存費、各種免疫染色抗体やリアルタイムPCR用の物品購入費、他施設での情報収集(移動費)および資料作成(印刷費)費用等の支出はほぼ当初の予定通りであったが、学会参加旅費の支出が予定よりやや超過した。しかし、前年度からの繰り越し金を含め、上記残額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に引き続き、各種免疫染色抗体やリアルタイムPCR用の物品購入費として30万円、他施設での情報収集(移動費)および資料作成(印刷費)費用として10万円の支出を見込んでいる。学会参加旅費として40万円使用予定である。
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