研究課題
大規模ヒトゲノムDNAデータベースを用い,精神遅滞と相関する新規の染色体領域を同定するプロジェクトから,"15q25.2-25.3"の欠失が新たに報告された(Cooper GM et al., Nat. Genet., 2011).我々は,15q25.2-25.3染色体の遺伝的変異(欠失)が精神機能に及ぼす影響を解析するため,15q25.2-25.3領域をヘテロ欠失したモデルマウスを染色体工学を用いて作製し解析を行った.昨年度は,マウスの遺伝的背景をC57BL/6Jに統一するため,スピードコンジェニック法を適用,10回に渡る交配を経て,今期から解析を行う事が可能となった.コンジェニック法により遺伝的背景をC57BL/6系統に統一したモデルマウスは,一見顕著な異常は認められなかった.しかし包括的な行動試験を実施した結果,幾つかのパラダイムにおいて異常を認めた.特に,新奇環境での活動量,さらに不安行動の指標となる行動解析(オープンフィールド試験)では,染色体変異マウスは活動量自体に変化は認められなかったものの,チャンバー壁面に滞在する時間(不安行動)が野生型に比べ有意に増加した.同様に不安行動を解析する試験である高架式十字迷路試験でも,不安様行動の増加を認めた.一方,海馬依存的な空間記憶に関する試験,バーンズ迷路試験では変化が認められず,またY-mazeによる作業記憶の変化も認められなかった.このことから,前頭葉,海馬の記憶に関するパートは正常である一方,不安行動に関わる扁桃体を含む神経回路には何らかの異常が生じている可能性がある.さらなる解析として,現在,核磁気共鳴画像法(MRI)により脳の構造変化について解析を進めているところである.
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Molecular Psychiatry
巻: 21 ページ: 386-393
10.1038/mp.2015.61.