研究課題/領域番号 |
26870403
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
折橋 洋介 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (40711312)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 死因調査 / 死因究明 / 行政調査 / 事故調査 / 行政法 / 公衆衛生 / 法医学 / 医事法 |
研究実績の概要 |
本研究の分析軸は,大きく分けて,①死因調査制度の史的分析,②他の実定行政調査手続の構造分析,③行政調査論の理論的分析,④現行死因調査制度の実態的把握,⑤死因調査実施機関に関する行政組織法的分析,⑥行政による死因調査の法的意義の法理論的分析の6つを予定しているところ,当初の計画通り,平成26年度は,①死因調査制度の史的分析を中心に,上記②・③・⑥についても検討を始めた。 死因調査制度の史的分析の対象として,特に明治期以降の裁判医学・法医学の確立とその法的環境に着目しつつ,連関する死体の行政上の取扱いに係る法制度である行旅病人及行旅死亡人取扱法等の制定過程等の調査を進めている。なかでも近代的公衆衛生概念の実定法化については,明治期そして第二次世界大戦後等に大きな変革期を認めるものの,他方で江戸期前の本邦の死因調査制度を踏まえ,その連続性及び非連続性についても考察しておく必要があることが分かった。これについて,今年度実施した古書籍を中心とした文献学的調査から,ごく僅かながら先行研究として扱うべき資料の存在を確認している。 他の実定行政調査手続の構造分析及び行政調査論の理論的分析については,消費者安全法の事故等原因調査や運輸安全委員会設置法の事故等調査ほか個別事故調査の仕組みについて,一部検討を始めた。 行政による死因調査の法的意義の法理論的分析については,一つの視角として,死因調査の結果として得られた情報の法的性質を検討することとしているところ,平成26年度は,ここにおいて検討すべき裁判例の収集を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
死因調査の史的分析を中心に,およそ当初の計画通り調査を進めている。死因調査の史的分析の調査対象は当初予定した以上に古い年代のものに拡げるべきであるとの視座を得たこと,古書籍等の調査において先行研究として扱うべき資料の存在を確認したことの意義は大きく,おおむね順調に進展しているとの評価が適当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,平成27年度は,現行死因調査制度の実態的把握及び死因調査実施機関に関する行政組織法的分析を中心に研究を進める。特に昨年(平成26年)9月20日に死因究明等の推進に関する法律(平成24年法律第33号)が失効したことに伴い,設置根拠を失った内閣府死因究明等推進会議及び同事務局について,新たに訓令室として死因究明等施策推進室が設置されていること,死因究明等推進計画(平成26年6月13日閣議決定)に関連して地方自治体には死因究明等推進協議会の設置等が要請されていること等の実態面及び理論面での検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた海外調査が実施できなかったため(行政不服審査法改正等の諸事情により,日程の確保が困難となった。),およそ外国旅費(ドイツへの研究調査旅費)分が次年度使用額として計上されている。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画では,平成26年度及び平成27年度に2度に分けて海外調査を実施することとしていた。これを平成27年度以降に実施する。
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