本研究の分析軸は大きく分けて,①死因調査制度の史的分析,②他の実定行政調査手続の構造分析,③行政調査論の理論的分析,④現行死因調査制度の実態的把握,⑤死因調査実施機関に関する行政組織法的分析,⑥行政による死因調査の法的意義の法理論的分析の6つであった。 平成30年度は,補助事業期間延長承認を得て,特に上記④現行死因調査制度の実態的把握及び⑤死因調査実施機関に関する行政組織法的分析を行うこととしていたが,④について一部の自治体の情報を得るにとどまった。それは,死因究明等推進協議会や自治体,関係学界等の情報収集を行うなかで,これらについての全国調査について,時機を含め,より慎重な検討の上で実施すべきであるという考えに至ったことが大きい。そのようなアイデアを得ることができたことがまず一つの収穫である。 そして,今年度は学会において研究成果の一部を発表する機会を得たほか,公開のシンポジウムにおいてコメントをする機会に恵まれた。 本研究の成果として,次の点を挙げる。まず死因調査手続は行政調査論において体系的・理論的に分析可能であるという示唆を得たこと,行政調査としてとらえ得る死因調査手続の整備充実においては実務運用に携わる者のよりよいかたちでの,将来を見据えた,議論をさらに積み重ねる必要があること,死因調査制度の全国整備に資する実態調査が重要であること,そして死因調査制度の充実及び死因調査実施機関の組織法的分析において必ずしも昭和期(特に第二次大戦)以降,明治期以降に限定することなく,それよりも古い時代のわが国における死因調査組織のあり方を分析しておくべき時期に来ているのではないかと考えるに至ったこと,である。
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