研究実績の概要 |
当該年度においては、21世紀出生児縦断調査を用いて、下記の2つの分析を実施した。 ①母親の年齢が子どもの健康に与える影響 日本および他の先進国では、母親の平均出産年齢が上昇しつつ有る。母親の年齢の上昇とともに、自然死産や先天性疾患など出産関連のリスクが高まる傾向が明らかになっている(Carolanet al., 2011)。その一方で、母親の第一子出産年齢の上昇は学歴や収入など社会階層の指標の上昇と相関する傾向にある。そして、社会階層の上昇は、子の健康と発達に良い影響を与えることが国内外の先行研究で明らかになっている(Power et al., 2013)。母親の出産年齢と子どもの健康と発達に関する論文は、イギリスの研究1報のみ(Sutcliffe et al., 2012)で、母親の平均出産年齢の上昇が顕著な日本でその影響は、まだ研究されていない。よって、21世紀出生児縦断調査を用いて検証した。1歳半時点での怪我や入院において、母親の年齢が高い群のほうがリスクが低かった。5歳半の時点では、共変量を調整後、顕著な傾向は見られなかった。上記の内容で、日本公衆衛生学会にてポスター発表を行った。現在、論文をBMC Pediatricsに投稿中。 ②乳児期における母親の関わりと子どもの学校生活への適応の関連 乳幼児期の母親の子どもに対する関わりは、アタッチメントを形成する上で非常に重要であり、言語能力を始めとする社会性の発達にも大きな影響を与えることが明らかになっている。現在、日本の学校において、暴力行為が特に低学年において増加傾向にあり、不登校児の数も減る傾向にない。よって、21世紀出生児縦断調査のデータを使って、乳児期に積極的に関わる母親とそうでない母親を比較し、その子どもたちの小学校生活への適応との関連を分析した。結果、母親の関わりが消極的である場合、子どもが学校生活に馴染めていない傾向が明らかになった。現在、Child: Care, Health, & Development誌に投稿中。
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