初年度にセットアップした機器を用いて、術中の血流モニタリングを進めた。特に脳血管バイパス、脳腫瘍、脳動静脈奇形に対して実施した。繰り返し計測を実施することによって、レーザースペックルによる脳表の血流動態の評価は脳腫瘍や脳動静脈奇形において特徴的な変化を捉えやすいことがわかった。脳血管バイパス術においてもバイパス血管の一時閉塞による潅流状態の変化を捉える事ができる症例もあったが、大きな変化を捉えることは難しかった。またICGとの同時計測についてはをレーザースペックルとの同時計測をするために必要な手術用顕微鏡自体が有しているICG用の機能の調整を終えることができなかった。従って、ICGとレーザースペックルの計測を個別に実施する方針をとったが、ICGを実施直後にレーザースペックル計測を実施してもスペックルパターンに影響をおよぼすことなく脳表血流を捉えることが出来た。課題であった、脊髄の血流計速に関しては、脊髄を覆う硬膜によってスペックルパターンを十分に描出できない事がわかった。硬膜を開けて直接脊髄を露出するような症例に対しても血流計測の実施を検討したが、期間内に適切な症例がなく実施は見送られた。
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