研究課題
低酸素誘導因子(HIF-1α)欠損マウス(ahKOマウス)は、肥満しても良好な耐糖能を有することが明らかとなった。本研究では、その原因を解明するため解析を行っている。これまでの研究から、ahKOマウスの脂肪組織において中性脂肪合成に関わるLipin1の発現が低下していることを見出した。しかしながら、ahKOマウスにおいて中性脂肪、コレステロール、遊離脂肪酸の血中濃度に変化は観察されなかった。Lipin1は、脂肪の分化にも関わるとの報告があるため、Lipin1の脂肪細胞分化に対する影響を解析した。培養脂肪細胞3T3-L1に対しHIF-1αの阻害剤および活性化剤を用いて解析を行ったところ、HIF-1αの増減に伴いLipin1の発現も増減する結果が得られた。また、HIF-1αの阻害剤を添加した状態で脂肪を分化させると、脂肪の分化効率が上昇し、HIF-1αの活性化剤を添加すると分化効率が低下することが明らかとなった。このことから、HIF-1αが脂肪の分化に重要な役割を果たすことが示唆された。また、HIF-1α阻害剤を添加し分化させた脂肪細胞においてアディポネクチンが高発現することを見出した。通常アディポネクチンの血清中濃度は、肥満に伴い減少するが、ahKOマウスにおいては、肥満が生じても血清アディポネクチン値が減少しないことをすでに明らかとしている。さらにahKOマウスの耐糖能は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)が関与していることから、アディポネクチンのGLP-1分泌に対する影響をGLP-1分泌細胞を用いて解析した。その結果、アディポネクチンがGLP-1分泌を促進することが明らかとなった。以上のことから、HIF-1αの発現抑制により、アディポネクチンを高発現する脂肪細胞へと分化し、アディポネチンの作用によりGLP-1の分泌が促進し、耐糖能の上昇につながっていると考えられる。
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