研究課題/領域番号 |
26870410
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
村田 知慧 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00614132)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Y染色体 / neo-Y / 偽常染色体領域 / 進化 / ゲノム / トゲネズミ |
研究実績の概要 |
真獣類のY染色体は矮小化しすでに多くの遺伝子を失っている。そのため性染色体の初期分化の過程については未解明な点が多く残されている。そこでその有用なモデルとなるのが性染色体に最近新たに常染色体ペア(ネオX、ネオY)が転座したオキナワトゲネズミである。本研究では本種におけるネオX連鎖遺伝子群の遺伝子量補償機構への適応過程、ネオXとネオY間の組換え抑制領域および活性領域(PAR)の形成過程を解明することを目的として研究を推進し、平成26年度は以下の結果を得た。 ネオ性染色体にXist RNAによる不活性化は起きておらず、メス3個体の繊維芽細胞のRNA-seq解析の結果、動原体から末端までの広い領域でネオX連鎖遺伝子群の両アリルからの発現を確認した。次に雌雄のRNA-seqデータの比較解析により、ネオ性染色体の動原体側に位置する約18Mbの領域内にオス特異的な塩基置換が蓄積していることを明らかにした。その領域に連鎖する18遺伝子のネオX、ネオY配列を比較し、1遺伝子においてはネオY配列に中途停止コドンが出現していることを明らかにした。残りの17遺伝子についてはORFが保存されているが、ネオXに比べてネオYの塩基置換速度とdN/dSは有意に増加し、遺伝子にかかる機能的制約が緩和されていることがわかった。さらに精巣、脳、肝臓のRNA-seqおよびPyroMark解析により、ネオXとネオYアリル間の発現量が2倍以上異なる遺伝子を5つ同定し、精巣と他の組織の間で発現変化パターンが異なる傾向にあることを示した。 本研究では、本種のネオXにXist RNAによる不活性化は起きていないが、一部のネオY遺伝子についてはアミノ酸配列や発現量のレベルでネオXとの遺伝的分化が進行していることを明らかにした点で、性染色体の初期分化に関する重要な成果を得たといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成26年度)に予定していた研究計画のほとんどは予定通りもしくは期待以上に進展したが、研究計画ⅢのネオYにおける遺伝子発現変化の検出については、解析対象とした遺伝子数が少なかったため、さらなる解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ネオ性染色体における組換え活性領域(新たなPAR)を同定するために、研究計画VIIのBACクローンの配列決定に加えて、RNA-seq解析で得られる遺伝子配列データを用いることで、より網羅的な解析を行うことを予定している。また、その他の研究計画に変更はないため、当初の予定通りに推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた学会に参加しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、当初予定していなかった国際学会への参加が確定しているため、繰越分は旅費として使用する。
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